日本経団連タイムス No.2826 (2006年8月24日)

日本メキシコ経済委員会、06年度総会を開催

−最近のメキシコ情勢と日墨関係/坂場・外務省中南米局長から聴取


日本経団連の日本メキシコ経済委員会(小枝至委員長)は7月14日、東京・大手町の経団連会館で2006年度総会を開催した。総会では、05年度事業報告・収支決算、06年度事業計画・収支予算等が承認されたほか、外務省の坂場三男・中南米局長(当時)から、最近のメキシコ情勢と日墨関係について講演を聴取した。講演の概要は次のとおり。

昨年4月に日墨EPAが発効してから1年余りが経過し、当初期待した以上の成果を上げている。貿易、投資などメキシコを取り巻く情勢が変化していく中、今後10年を見越したビジネス戦略を立案し、改めて日墨EPAを評価することが重要である。中長期的なビジョンを持たなければ協定の本当の意味はみえてこない。

7月に行われた大統領選挙では、カルデロン候補が僅差で勝利したが、選挙に不正があったとして、対立候補のロペス・オブラドール候補が選挙裁判所に訴えている。90万票の無効票を数え直したとしても、形勢が逆転することはないとの見方が大勢を占めており、8月末までに最終的な審判が下され、12月には新しい大統領が誕生する。また、選挙結果に関する興味深い点として、変革を標榜するロペス・オブラドール候補を高齢の世代が支持し、現状を肯定するカルデロン候補を若い世代が支持したことがある。カルデロン候補は、外国からの投資による雇用創出を強く訴え、若い失業者の支持を獲得した一方、高齢の世代は、現状に対する不満からロペス・オブラドール候補を支持した。伝統的な政党が基盤を失いつつあり、若者は現状維持を望んでいる。
また、カルデロン候補は、法人税の引き下げ、メキシコ国営石油会社(PEMEX)への民間資本の導入、上下水道、鉄道網、幹線道路などのインフラ整備を選挙公約に掲げており、経済運営については、現政権の政策を引き継いでいる。

日本とメキシコの貿易は03年に落ち込んだが、04年以降は順調に回復している。日墨EPAの効果については、初年度から新たな関税割当(無税)を受けた自動車の対メキシコ輸出が順調に拡大し、輸入も鉱物資源や食品の伸びが顕著であり、上々の滑り出しである。
さらに、5月に開催されたEPAに係るビジネス環境整備委員会の第2回会合では、治安や債権回収、メキシコの裾野産業の競争力強化などが議論された。日本側関係者は、ビジネス環境整備に対するメキシコ側の真摯な取り組みを高く評価した。特に日本側が昨年4月の前回会合において、治安状況について実例を提示しつつ問題点の改善を訴えたところ、今年に入ってから問題は発生していない。また、知的財産権の保護についても具体的な要望を出すことで徐々に改善している。今後は、来年の第3回会合に向けて、メキシコの裾野産業、中小企業の育成の分野で具体的な成果を上げられるよう作業を進めていく。

【国際第二本部中南米・中東・アフリカ担当】
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