日本経団連タイムス No.2831 (2006年9月28日)

日韓観光協力会議を開催

−「北東アジア観光ゾーン」形成に向けた覚書を採択


日本経団連の観光委員会(江頭邦雄委員長)と韓国の総合経済団体である全国経済人連合会(全経連)の観光産業特別委員会(朴三求委員長)は18日、ソウルで「日韓観光協力会議」を開催し、観光立国に向けた両国経済界の取り組みや北東アジアにおける観光ゾーンの形成等について意見交換を行うとともに今後の協力に関する覚書を採択した。
今回の会議は、両国経済界が観光分野の課題を取り上げる初めての試み。日本側からは江頭委員長、宇佐美晧司・観光委員会企画部会長、大西珠枝・国土交通省大臣官房審議官をはじめとする22名、韓国側からは姜信浩全経連会長や朴三求観光産業特別委員長をはじめとする25名が出席した。

会議の冒頭、姜全経連会長が、日韓の観光分野における協力を北東アジア共同体に発展させていくことの重要性を指摘したほか、朴委員長が、サマータイム実施に向けた両国政府への働きかけや、日韓中3国によるプロサッカー大会開催を提案した。

これに対して、江頭委員長は、国際観光立国の意義は、「魅力ある国づくり」「大きな経済波及効果」「国際的な相互理解」の3点に集約されるが、日本経団連としては、今後、観光分野において両国がWin―Winで発展できるよう全経連と協力したいと述べた。

会議の前半では、姜柱安・アシアナ航空社長が、訪韓日本人旅行者数を244万人から300万人に増加させるための取り組みとして、韓流ブームに続く文化観光プログラムの開発とレジャー観光都市構想を推進していると説明した。宇佐美部会長は、日本経団連として、ドイツ・フランスでの調査の成果も参考にしつつ、世界に開かれた施策、そのためのプラットホーム構築、情報発信ツールの整備、コンテンツの充実に取り組んでおり、この秋は、観光立国推進基本法制定に向けた与野党への働きかけを行っていくと述べた。続いて、韓国文化観光部の盧・国際観光チーム長が、民間・地域主導型の観光政策への転換を説明。大西審議官はビジット・ジャパン・キャンペーンなどの施策や、企業と連携した日本ブランドの発信など経済界との連携について述べた。

意見交換

意見交換では、金・韓国観光公社社長から、日本はインバウンドのみならず訪韓旅行者数も増加させるべきであるとの意見が示された。これに対して、江頭委員長は、インバウンドがアウトバウンドを大きく下回っている日本の現状を説明し、隣国との交流が最重要であることは認識していると述べた。

また、会議の後半では、「北東アジアにおける観光ゾーンの形成」について意見交換が行われた。日本側からは、清水愼一・JTB常務が、まずは日韓間での協力関係を構築することが必要であることを指摘し、両国旅行業界の連携によるツアー造成や、共同プロモーション、観光データの共有を提案した。これに加え、林和男・ぴあ副会長が、「冬のソナタ」のロケ地への観光客増加を例に挙げ、エンターテイメントと観光の連携を日韓共同で進めていくことを提起した。これに対し、韓国側からは、宋・韓国文化観光政策研究院院長が日韓中の観光推進モデル地域の指定を提案したほか、人材育成での協力、3国のホテル業界の連携の必要性なども指摘した。

最後に、日本経団連と全経連が、観光分野で協力して取り組む事項をまとめた覚書を採択し、来年には第2回日韓観光協力会議を東京において開催することを決めた。
覚書の骨子は次のとおり。

1.北東アジアにおける観光ゾーン形成

日韓観光協力会議を継続して開催する。両国の固有の魅力をアピールするツアーの造成や、青少年の修学旅行の推進に努める。

2.プロモーション活動の推進

世界各国からの旅行者数増大に向けて、両国の関係機関による共同プロモーションを支援し、民間企業に協力を働きかける。

3.エンターテイメントと観光の連携

エンターテイメント観覧を目的としたツアーの充実を図るよう、関連企業に要請する。

4.人材育成

産官学連携を強化することにより、人材育成に協力する。

5.サマータイムの実施

日韓両国がサマータイムを実施するよう協力して働きかける。

【産業第一本部国土担当】
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