日本経団連タイムス No.2835 (2006年10月26日)

第5回企業倫理トップセミナー開催

−企業倫理の浸透・徹底へ、トップの役割再確認


日本経団連は16日、東京・大手町の経団連会館で第5回企業倫理トップセミナーを開催した。日本経団連は毎年10月を「企業倫理月間」と定め、会員各社が企業倫理の徹底に向けて具体的に取り組むよう呼びかけてきている。同トップセミナーは、その主要行事のひとつ。
今回のトップセミナーには会員企業のトップや役員ら、約400名が出席し、講演や事例研究などを通じて、企業倫理の浸透・徹底のために企業トップが果たすべき役割を改めて確認した。

開会あいさつで武田國男副会長・企業行動委員長は、最近の不祥事の大半は、現場における油断や慢心よりも、企業倫理が徹底していないことと経営トップが現場の情報を十分把握していないことに原因があると指摘。その上で、「経営トップには、日々、企業行動を総点検し、社内体制を見直し、企業倫理の徹底に努めることが義務として課せられている」との考えを示した。

続いてあいさつに立った御手洗冨士夫会長は、経営トップには、「常に長期的視野に立ち、不祥事防止に万全を期す責務」と「自らを律するとともに、役員、社員の倫理観を醸成する義務」があることを強調。
キヤノンの取り組みを例に引きながら、経営トップは、社内を歩いて社員に行動の優先順位について直接語りかけることが大切であり、「トップが現場を見ているということが現場に緊張感を与え、その緊張感が倫理観に結びついた行動として表れる」と述べた。
その後、麗澤大学企業倫理研究センター長・国際経済学部教授の高巌氏が、「経営トップの果たすべき役割について」の演題で講演し、事例研究を行った。

講演では、経営者の信認義務、ガバナンスと意思決定、コンプライアンスと内部統制、メディアと企業との関係、リスクの洗い出し作業について解説。特に、(1)法人の意思を代表する経営者には、忠実義務と善管注意義務を履行することが求められる(2)経営者は株主に信認されたときから、この2つの義務を負う(3)この2つの義務は、経営者だけでなく会社が社会に対して負っている義務でもある(4)会社は社会の信認の上に経営を成り立たせており、日本の社会は「企業性善説」を前提に出来上がっている(5)企業にとっての主題は、社会の利益を考えることである――と述べた。
ガバナンスのあり方については、プロセスを大切にすることや、経営に社外役員などの「社外の目」を入れることの重要性を、また、内部統制に関しては、これまでの権限構造の配分を抜本的に変えることや、監査結果のフォローアップを十分に行うこと、横のコミュニケーションをしっかりと考えることなどの必要性を指摘した。リスクの洗い出しについては、洗い出したリスクを、優先順位をつけて処理していくことが現実的だと述べた。

事例研究では高氏が、企業倫理が問われる3つの具体的モデルケースを提示。当該事態に直面した経営者が、どのように対応すべきかを参加者同士が議論し、発表した。

【社会第二本部企業倫理担当】
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