日本経団連タイムス No.2835 (2006年10月26日)

経済連携協定の「拡大」と「深化」を求めて提言


日本経団連は17日、提言「経済連携協定の『拡大』と『深化』を求める」を公表した。

日本経団連では2004年3月、「経済連携の強化に向けた緊急提言」を取りまとめ、以来、経済連携協定(EPA)の戦略的推進を政府・与党など関係方面に働きかけてきた。その後、シンガポールに加えて、05年4月にメキシコ、今年7月にマレーシアとの間でEPAが発効し、9月にはフィリピンとの間でEPAが締結された。他方、韓国や中国をはじめ各国はEPA・自由貿易協定(FTA)に対する取り組みを一様に加速化させており、いわば「EPA・FTA競争」の様相を呈している。このような中、わが国としては、時機を失することなく、EPAを線から面へと拡大するとともに、包括的で自由化度の高いEPAをめざして内容を深化させていくことが不可欠である。
こうした観点から、経済連携推進委員会(米倉弘昌委員長、大橋洋治共同委員長)では、今年5月末の設立以来、精力的に検討を進め、今回、提言「経済連携協定の『拡大』と『深化』を求める」を取りまとめた。同提言の概要は次のとおり。

まず、EPA推進の戦略的意義は、EPAがグローバルな事業体制の構築を促進する上で重要な経済インフラであるとともに、資源・エネルギー、食料の安定的供給の確保に資するものであるということである。さらに、EPAを推進するに当たっては、第1に、経済的に緊密な関係にあるアジアと共に豊かさを追求すること、第2に、資源・エネルギー、食料供給国との関係を緊密化することが不可欠である。
その上で、わが国としては、東アジアに重点を置きながら、包括的で質の高い多国間および二国間のEPAを並行的かつ迅速に推進することによって、経済連携のネットワークを構築するとともに、それをベースとした地域経済統合のあり方についても検討を進めるべきである。具体的には、アジアにおけるEPAのハブとなっているASEANとの交渉を加速化するとともに、いまだEPAが締結されていないインドネシア、ベトナム、重要な隣国である中国、韓国、新興経済国インド、資源・エネルギー等の供給源であるオーストラリア、湾岸諸国等について、EPA交渉を開始、加速化する必要がある。また、EPAの中身としては、物品・サービス貿易の自由化のみならず、経済活動全般にかかわる諸ルールの整備が重要である。
以上のようなEPAの「拡大」と「深化」を下支えするのが、国内構造改革を通じたEPAの推進である。中でも、農業分野の改革の促進と外国人材の受け入れの拡大が大きな課題である。農業に関しては、競争力のある国内農業の構築と市場開放との両立に向けた基盤整備を着実に実行する必要がある。また、外国人材の受け入れに関しては、在留資格としての「専門的・技術的分野」の範囲の拡大や研修・技能実習制度の見直しが求められる。

国内の推進体制整備が重要

このような構造改革を含めて、EPAの拡大と深化を迅速に進めるためには、国内の推進体制を整備することが重要である。まず経済財政諮問会議に相当する機能を対外経済戦略面で担う「対外経済戦略諮問会議」を設置し、EPA交渉の推進に当たって民間の意見を継続的に取り入れる仕組みを確立すべきである。また、内閣総理大臣を本部長とし、EPA・WTO交渉等、対外経済戦略を担当する特命大臣を本部長代理とする「対外経済戦略推進本部」を内閣に創設することなどを通じて、官邸主導による対外交渉および国内調整権限の一本化を図ることが重要である。さらに、EPA交渉の目標の実現に向けて具体的なロードマップを政府として策定し、進捗状況を管理する必要がある。

【国際第二本部経済連携担当】
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