日本経団連タイムス No.2835 (2006年10月26日)

第1回インターネット・ガバナンス・フォーラムに向け提言

−国際連携による安全・安心なインターネット社会構築について提案/セキュリティ対策、重点的議論を主張


日本経団連は17日、「国際連携による安全・安心なインターネット社会の構築に向けて―第1回インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)への提言―」と題する提言を公表した。同「提言」は、30日からアテネで開催される、第1回IGFに向けて日本産業界の意見を取りまとめたものである。日本経団連では、関係団体等と連携してミッション(団長=村上輝康・野村総合研究所理事長)を派遣し、メーンセッション等で「提言」の内容について紹介するとともに、日本の産業界の考え方を同会議におけるコンセンサス形成に反映できるよう、働きかけを行う。

IGFは、昨年開催された第2回世界情報社会サミットにおいて開催が決定された、国連事務総長主催の会議であり、世界中のマルチステークホルダーが一堂に会し、インターネットに関する諸課題についての意見交換を行う予定である。

「提言」は、(1)日本の産業界としてインターネット等の情報社会の諸課題に取り組む意義(2)安全・安心なインターネット社会を構築するための具体的提案(3)ブロードバンド先進国である日本の事例紹介――で構成されている。
今日、世界中でインターネットを中核としたイノベーションが進行し、新たな知の創造と交流のサイクルが生まれてきている一方で、サイバー犯罪やスパムメールの増加、デジタル・デバイドの拡大など、発展に伴う負の課題も深刻化している。これらの解決のためには、1国のみによる対応では十分な成果が上げられないことから、国際機関、政府、企業、市民社会が協調して取り組むことが重要である。また、ブロードバンド先進国であるわが国の産業界にとって、ビジネス上必要不可欠なインフラであるインターネットのガバナンスやセキュリティは重要課題であり、その安定運営に貢献することは、インターネットから恩恵を受ける者としての、いわば責務である。このような観点から、IGFはインターネットに関する課題を取り扱うことがふさわしい場であり、日本経団連として、IGFに向けてメッセージを積極的に発信することとした。

「提言」ではまず、民間主導で発展してきた、自由で開かれたインターネットが、より安全かつ安心して利用できる環境の構築を国際社会の最重要課題とした上で、IGFが「セキュリティ確保のための新たな国際連携の実現」「社会的・文化的基盤の整備」の2点について、マルチステークホルダーによる広範なコンセンサスの形成および情報共有を行う場となり、さらにIGFでの議論が関係団体へフィードバックされ、各国での取り組みが強化されることへの期待を表明している。その上で、第1回IGFに対し、国際社会の協調対応が必須であり、かつ喫緊の課題となっているセキュリティ対策について重点的に議論すべきことを主張している。
まず、セキュリティ確保のための新たな国際連携に関し、次の3つの提案を行っている。

  1. 国際的な情報共有体制の構築=対策レベルの劣った国・地域がサイバー犯罪に利用されることがないよう、セキュリティに関する国際的な情報共有および国際協調によるセキュリティ対策を強化。途上国は、その拠点となる「CSIRT」設置を積極的に検討し、国際機関や先進国は、その支援として人材・ノウハウの提供を推進。
  2. トレーサビリティの確保=インターネットの高い匿名性を悪用した犯罪者等の追跡手段の1つとして、「whois」データベースへの適正な情報登録を義務化。
  3. スパム対策=日本における、携帯電話発のスパムメール撲滅の成功例を踏まえた、技術と制度の両面からの対策の実施。

次に、インターネットの利活用を支える社会的・文化的基盤の整備に関し、(1)キャパシティ・ビルディングによるデジタル・デバイドの解消(2)セキュリティ文化の普及(3)高度情報セキュリティ人材育成(4)自由と規制のバランスについての健全な議論――の4点を提案している。
また、「提言」の最後では、ユビキタスネットワーク化が進展する世界各国に向けて、わが国におけるベストプラクティスの一例である「携帯電話発のスパムメール撲滅の事例」および、複合リスクにより生じるセキュリティ危機の先行的事例の一例である「Winnyに代表されるP2P技術を用いたファイル交換ソフトを経由しての情報漏洩事例」を紹介している。

【産業第二本部情報通信担当】
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