日本経団連タイムス No.2835 (2006年10月26日)

「社会保障協定の一層の締結促進を求める」要望取りまとめ

−保険料の二重負担等解消へ


日本経団連は17日、日本在外企業協会、日本貿易会と連名で「社会保障協定の一層の締結促進を求める」要望を取りまとめた。

事業活動のグローバル化等に伴い、外国に長期滞在(永住者以外で3カ月以上滞在)する日本人は今や70万人(2005年10月1日現在)に達している。このうち、わが国企業から海外に派遣されている民間企業関係者(本人約21万7000人)の中には、日本と駐在国の双方の年金制度等に加入し、保険料を二重に負担している場合がいまだにある。
また、駐在期間が短いと当該国での年金受給資格を得ることができず、保険料が事実上掛け捨てになってしまっている場合がある。

日本経団連では、こうした保険料の二重負担等を解消すべく、02年9月に、今回と同様、3団体連名で要望を取りまとめ、米国をはじめ主要な国々との社会保障協定の早期締結を働きかけてきた。このような経済界からの強い要望を受け、政府も精力的に交渉を進めた結果、当時既に協定が発効していたドイツ、英国に加えて、昨年は韓国および米国との協定が発効するとともに、フランスとベルギーとの協定が締結され、今年度中の発効が予定されている。また、今年に入ってカナダと協定が締結され、来年度中には発効の見込みとなっている。
さらに、今年7月には、オーストラリアとの間で実質合意に至っている。
この結果、4年前に協定の早期締結を要望した諸国のうち、ヨーロッパの一部の国を除き、ほぼ目途が立ったことから、社会保障協定の一層の締結促進を目的として、今年春にASEAN、EU、中南米の24カ国を対象に、現地日本人商工会議所等の協力を得て実態調査を改めて実施した。その結果、いまだ13カ国で保険料の二重負担が生じており、現地からは協定の早期締結を求める声が強いことから、改めて要望を取りまとめた。

要望は2点であり、第1は、二重負担が発生している国々、金額が大きい順にイタリア、チェコ、ブラジル、スペイン、ハンガリー等との社会保障協定の早期締結を求めている。
第2は、社会保障協定を速やかに発効させる観点から、包括特例法の整備を要望している。現在は協定署名後、国会において、協定の承認審議と並行して、協定と厚生年金保険法等関係国内法との調整を行うための国別の特例法案に関する審議が必要である。そのため、各国共通に適用可能な包括的な特例法を整備することによって、国別の審議を今後不要とし、協定の発効を早めることで、二重負担を少しでも減らすことを狙いとしている。

【国際第一本部貿易投資担当】
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