日本経団連タイムス No.2839 (2006年12月1日)

ドイツ政労使訪日団と懇談

−共通の課題で意見を交換


日本経団連は11月16日、東京・大手町の経団連会館でドイツの政労使訪日団と懇談を行った。一行は、日独両国間の雇用・労働問題についての意見交換を目的として、2000年から3年ごとに開催している「日独政労使交流プログラム」で訪日したもの。ドイツ側は、ヴァッサーヘーベル・連邦労働社会省事務次官、クレヴァー・ドイツ使用者連盟事務局次長、マテーキ・ドイツ労働組合総同盟中央執行委員らが出席、日本経団連からは岡村正・副会長らが出席した。

懇談の冒頭、岡村副会長は、10月に日本経団連欧州ミッションでドイツのメルケル首相を訪問した際、ドイツではハイテク戦略の下、イノベーションの推進に力を入れていること、人口動態の変化に伴い社会保障制度改革が急務となっていることなどの話があったことを紹介、これらはそのまま日本にも当てはまることであり、「両国は多くの共通する課題を抱えている」との認識を示した。

これに対しヴァッサーヘーベル事務次官は、経済のグローバル化が進み、両国経済は厳しい国際競争にさらされているとの認識を示しながら、その競争の中では、技術革新や製品・サービスの質の向上をめざすべきであり、決して労働条件を引き下げるようなものであってはならないと強調。「どのような形・ルールでグローバル競争に参入すべきか、方向性を見いだすことがドイツの政労使にとっての当面の課題である」と述べた。
また、両国共通の課題である少子化対策についてヴァッサーへーベル事務次官は、少子化の原因は社会の変化に伴う複合的なものであって、子育て支援手当制度など、法的な対策だけでは不十分であると指摘、仕事と家庭を両立させる環境整備として、子供を預ける施設の拡充などが求められると説明した。
さらに、若年雇用問題については、ドイツには何らの職業資格・能力を持たない30歳以下の若者が50万人もおり、比較的貧困な社会層の親を持つ者が多いと指摘。どういう社会層の出身かで将来の人生が決まってしまう社会にしてはならず、そのために初等・中等教育に一層力を入れなければならないとの考えを示した。

最後に岡村副会長は、安倍政権発足後、政府によって「イノベーション戦略」と「教育再生」をそれぞれ検討する会議が発足するなど、総合的に国のあり方を検討する議論が始まっていることを紹介、今後ドイツの例も参考にしていきたいと語った。

【労政第二本部国際労働担当】
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