日本経団連タイムス No.2840 (2006年12月12日)

若林環境相との懇談会開催

−環境行政のあり方で論議


日本経団連は11月22日、都内のホテルで若林正俊環境大臣はじめ、環境省首脳との懇談会を開催した。環境省からは若林大臣、土屋品子副大臣、北川知克政務官、田村義雄事務次官らが、日本経団連からは御手洗冨士夫会長、関係副会長らが出席。今後の環境行政のあり方などをめぐり、意見を交換した。

会合の冒頭、御手洗会長は経済のグローバル化、人口減少といった変化が急激に進行する中で、日本を内外の人々にとって魅力あふれる「希望の国」とするためには、構造改革の継続とともに、国際競争力の強化や経済成長の確保に努めることが不可欠であると指摘。環境問題については、「官民の適切な役割分担の下で、経済成長の制約要因とならないよう、規制や税に頼らず、民間の自主的な努力を活かすべきである」と述べた。

続いてあいさつした若林大臣は、今年7月に政府が策定した「経済成長戦略大綱」において、環境分野からわが国の成長力、競争力を牽引する視点に立って戦略的に政策を展開することになったと紹介。「今後の環境政策の最重要課題は、脱温暖化社会の構築と循環型社会の形成である」と説明した。
脱温暖化社会の構築については、「京都議定書第一約束期間が終了する2013年以降の国際枠組の検討に当たっては、わが国がイニシアチブを発揮していくべき」と表明。一方、「国内の温室効果ガスの排出状況は1990年度との対比で2005年度は8.1%増加しており、京都議定書の6%削減約束の達成は容易ではない。目標達成のためには対策を総動員する必要がある」と指摘し、「特に、バイオエタノールの運輸部門への導入加速化に注力するとともに、来年度税制改正では、環境税に加えて道路財源と個別税制のグリーン化が総合的に議論されることを期待している」と述べた。
また、循環型社会の形成については、「国内対策のほか、アジア各国で資源需要が増大している状況を踏まえ、国際的にも3Rイニシアティブを推進していく」と語った。

具体的な論点をめぐっては、日本経団連側から、「日本経団連では、温暖化防止および廃棄物対策について数値目標を定めた自主行動計画を推進しており、双方の目標を着実にクリアしている」ことを強調。
続いて国内の温暖化対策について、「環境税については、石油価格がここまで高くなり、国民、企業は重い負担感を持っている上、効果が期待できないことから反対である。個々の企業の排出量に対するキャップ・アンド・トレード制度は、企業統制そのものであり、中国等への生産移転が進めば地球規模での温暖化防止に逆行する恐れがある」と指摘。
2013年以降の国際枠組については、「日本の国際競争力を損なうことのないよう、官民が連携して取り組むことが重要」と強調するとともに、「京都議定書の反省に立ち、すべての主要排出国が排出削減に取り組めるよう各国の実情に合った削減目標や達成時期、ならびにその手段を選択可能とする必要がある」との考えを示した。
さらに、循環型社会の形成について、「容器包装リサイクル法における入札方法の見直しなど、企業のリサイクル等の取り組みを促すような規制の見直しも必要である」と指摘した。

これらの意見を受けて環境省側は、「産業界による各分野での目標を持った取り組みには感謝する」とした上で、温暖化対策について、「京都議定書の6%削減は究極の温暖化防止に向けた一里塚に過ぎず、今後30年、50年という長期間で見れば相当の削減量を要する。COP12(国連気候変動枠組条約締約国会議)でも報告された英国のスターン・レビューによれば、いま行動を起こせば気候変動による最悪の影響は回避できるとされている。わが国としてもあらゆる対策の総動員が必要。特に排出権取引については国内の議論だけでなく、国際的な状況を見ながら経済との整合を考えなければならない問題である」と述べた。
廃棄物対策については、「容器包装リサイクル法の運用面での入札方法の問題は、現在他省とともに調整を行っている。廃棄物処理法に関する欠格要件のあり方についても今後慎重に検討を行っていきたい」と説明した。

【産業第三本部環境担当】
Copyright © Nippon Keidanren