日本経団連タイムス No.2840 (2006年12月12日)

「観光立国推進体制に関する考え・中間とりまとめ」公表

−「政府の推進体制の整備」などを中心に


日本経団連は11月21日、「観光立国推進体制に関する考え・中間とりまとめ」を公表した。

「観光立国」とは、魅力的な生活空間を創造することで国内外からの集客を確保し、これが地域の経済社会の活性化につながるという好循環をつくりだすことである。また、海外からの旅行客を受け入れることは、草の根レベルも含めた相互理解を促進し、国際政治や外交の面にも重要な影響を及ぼす。さらに観光は、単に旅行業や宿泊業のみならず、広汎な分野の産業と密接な関連があり、その経済効果は極めて大きい。
こうした観点から日本経団連では、「国際観光立国に関する提言」(2005年6月)、「観光立国基本法の制定に向けて」(06年3月)を発表するなど、かねて魅力ある国づくりを通じた訪日外国人旅行者増大に向けた具体的施策の推進と関連法制度の整備を求めてきた。
この間、政府においても、ビジット・ジャパン・キャンペーン(VJC)をはじめとする取り組みが進められ、大きな成果を上げている。また安倍内閣は「美しい国、日本」を理念として掲げ、道州制の導入を含む構造改革に取り組む考えを明らかにしているが、地域単位の観光立国の推進はまさにその契機となる。さらに対外的側面に目を向けると、観光立国は人的交流の拡大を通じた東アジア経済連携の基盤強化に貢献するという点で、同内閣が掲げる「アジアゲートウェイ構想」と軌を一にする。

現在、臨時国会において審議されている観光立国推進基本法の成立後に重要になってくるのが、その推進体制の整備である。政府では、国土交通省の観光担当部局を6課体制とし、関係省庁との間で人事交流を行うなど、国を挙げた体制づくりに努めており、こうした取り組みは評価できる。しかし、観光立国を国家百年の計と位置付け、長期的視野の下、地域や民間の創意工夫を踏まえた施策が総合的・効率的かつ迅速に展開されるためには、さらなる体制整備が不可欠である。
そこで日本経団連では、政府・与野党の動きも踏まえつつ、観光立国に係る諸施策の企画立案・実施を担う体制のあり方について検討を重ね、今般、以下の考えを中間的に取りまとめた。
今回の中間とりまとめは、「基本的考え方」「政治的リーダーシップへの期待」「政府の推進体制の整備」「国際観光プロモーション機能の強化」「地方自治体における推進体制の整備」「産官学連携による観光立国推進」「観光立国推進における民間部門の役割」の7項からなっているがこのうち、「政府の推進体制の整備」「国際観光プロモーション機能の強化」の2項が中心部分。

まず、「政府の推進体制の整備」については、現在の政府の取り組みを評価しつつも、今後とも、責任体制の明確化、政策の説明責任の履行、事前・事後の政策評価実施等を徹底し、タテ割りの弊害を排し省庁間の一層の連携を図りながら、施策の企画立案機能を強化することを求めている。また将来的には、観光立国推進のために行政組織を再編することも考えられるが、その際は、タテ割り行政の弊害を是正し、行政の効率化を図ることを前提に、各省庁にわたる観光関連行政部署の企画・立案機能を整理統合する方向で検討されるべきであるとした。
「国際観光プロモーション機能の強化」については、限られた人材・資金を有効かつ効率的に活用し国際観光プロモーションをより効果的に展開するため、VJC実施本部と国際観光振興機構(JNTO)のさらなる連携を訴えている。特に、できるだけ早い時期に、政治的リーダーシップの下でVJC実施本部が有する予算・ノウハウとJNTOの長年の海外での経験などそれぞれの長所を活かす形で体制を一本化して機能の強化を図る必要性を指摘している。

日本経団連としては、引き続き、魅力ある国・都市・地域づくりやわが国産業の国際競争力の強化、北東アジア域内の経済連携強化の観点から、各地経済界とも連携しつつ必要な施策の実施とその推進体制のあり方などについてさらに検討を加え、関係方面に働きかける予定。

【産業第一本部国土担当】
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