日本経団連タイムス No.2840 (2006年12月12日)

日本経団連フォーラム21・11月講座を開催

−「競争優位を確立するための戦略」/竹内・一橋大学大学院教授が講演


今年5月に開講した第17期の「日本経団連フォーラム21」は、11月17日に月例講座を開催した。今回は、同フォーラムのアドバイザーを務めている竹内弘高・一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授が、「競争優位を確立するための戦略」と題し、講演を行った。
竹内教授は、戦略を考えるときには2つの流れがあり、そのうちの1つが「競争戦略」で、もう一方が「資源ベースの戦略」であると述べ、特に今回は、競争戦略の部分に焦点を当てた。竹内教授の講演要旨は次のとおり。

現在の企業間競争は、「イノベーション」をキーワードに、競争優位の戦略の構築をめざして各分野で日々激しさを増している。その中で成功例をみると、IBMは企業文化を改革してさらなる成長を成し遂げ、アップルコンピュータのiPodはデザイン・イノベーションにより販売数を伸ばし、グーグルは技術を変革することで業界の先駆者となった。日本企業では、ブックオフコーポレーションやアスクルがサービス面をイノベートすることで、新しい事業展開に成功した。

企業間競争における優位性は、「オペレーションの効率化」と「戦略的ポジショニング」によって決定される。これまで日本企業は、得意とするTQM(total quality management)やカイゼン活動、ZD運動(Zero Defects)などでオペレーションの効率化に積極的に取り組み、グローバルスタンダードを達成してきた。それが日本企業の優位性につながってきたのである。それを踏まえ、これからはいかに戦略的なポジショニングを得るかに目標を置き、さらなる企業の改革に取り組んでいくことが重要になっている。
そのとき大切なことは、「他者と違うこと」を行うことである。好例は、アメリカのサウスウエスト航空で、中規模都市・2番手空港をつなぐ短距離直行路線にシフトするという大胆な戦略を用い、大きな成果を収めてきた。また、「何をやらないか」を選択することも重要である。日本企業は、この点で大きな課題を残している。半導体の製造状況を例にとってみてもその点は明らかで、日本企業の多くが多数のセグメントに携わっているのに対し、欧米の企業は分野を絞ることで、自ら競争優位な状況をつくり出している。これからはベストを競うのではなく、いかにユニークなものを生み出していくことができるのかによって、その企業の競争優位性が決まっていく。日本企業もそこにフォーカスし、戦略を考えていく必要がある。

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戦略についてのもう1つの流れである「資源ベースの戦略」については、引き続き1月講座で講演の予定。

【事業サービス本部研修担当】
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