日本経団連タイムス No.2841 (2007年1月1日)

産業技術委員会を開催

−イノベーションの創出をめぐり経産省、産業技術総合研究所と懇談


日本経団連の産業技術委員会(庄山悦彦委員長)は12月5日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、経済産業省の小島康壽産業技術環境局長ならびに産業技術総合研究所(産総研)の吉川弘之理事長から、同省が提唱している「イノベーション・スーパーハイウェイ構想」、および同研究所におけるイノベーションの創出に向けた取り組み状況について説明を聴いた。

取り組み状況の説明聴取

小島局長は、わが国の研究開発上の課題として、(1)研究開発・技術力が事業化・製品化に結びついていない(2)異分野融合やサイエンスまでさかのぼった研究が必要とされるため、従来のリニア型のイノベーションを適用できない状況が出現している(3)大学・公的研究機関と企業との間、いわば研究と市場とをつなぐイノベーション・プロセスで根詰まりを起こしている――といったことを指摘。イノベーションを推進する上では、こうした課題を解決することが重要であり、研究と市場との間での好循環を形成するとともに、産学官の研究開発に横串を通す仕組みを構築できるよう、「イノベーション・スーパーハイウェイ構想」を打ち立てた、と述べた。

その上で、同構想が掲げる5つのポイントを提示。(1)「双方向の流れをつくる」=科学までさかのぼった研究開発と、将来的な市場イメージを視野に入れた研究開発の推進(2)「知識の合流・融合を進める」=産学官連携、異分野の融合の推進(3)「出口につなげる」=経営戦略と研究開発の一体化、戦略的な特許・国際標準化(4)「流れをスムーズにし、スピードの加速」=画一的な予算、契約制度等の柔軟化(5)「主体性・自主性を持って進める」=国が技術戦略の方向性を示し、革新技術開発をリード――と説明した。

また、構想の実現に向けて、経産省では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や産総研(AIST)との連携の強化、産業構造審議会産業技術分科会での具体的な処方箋の検討と併せて、政府における関連する会議の戦略的な活用を図る、と述べた。

さらに、民間に対しても、(1)経営戦略と研究開発戦略の一体化(2)国際標準化戦略、特許戦略を含めた戦略的な出口対応の促進(3)異分野融合など、戦略的な産学連携の推進――を求めるとともに、イノベーション・プロセスに存在するあらゆる「壁」を取り払うよう努力してほしいと要請した。

続いて、産総研の吉川理事長が、同研究所でのイノベーションの創出に向けた取り組み状況について説明。高度経済成長時代のように知識を流す道がなくなった今日、21世紀における日本のイノベーションは、新しい産学連携によって道をつくっていく必要があると指摘。その上で、イノベーションを強力に推進するには、研究成果の統合的な発信、社会ニーズの的確な受信がポイントであり、産総研でも、イノベーション推進室・理事の設置、産業技術アーキテクト(科学技術の知識の供給者と使用者をつなぐ人)の新設等、体制強化を図っていると強調。

また、持続発展可能な社会の基本設計である「ミニマル・マニュファクチャリング」、異分野融合に向けた取り組みとしての「機械工学と利用の異分野融合による内視鏡手術トレーニングシステムの開発」など、イノベーション・スーパーハイウェイ構想の加速材として取り組んでいる8つの施策を例示した。

【産業第二本部開発担当】
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