日本経団連タイムス No.2842 (2007年1月11日)

経済政策委員会を開催

−「わが国経済の現状と政策運営のあり方」/東京大学大学院経済学研究科長・植田教授から聴取


日本経団連の経済政策委員会(奥田務、森田富治郎共同委員長)は12月14日、東京・大手町の経団連会館で、植田和男・東京大学大学院経済学研究科長から、「わが国経済の現状と政策運営のあり方」についての説明を聴取。その後、築舘勝利・経済政策委員会企画部会長から、経済政策委員会意見書案について説明があり、委員会として了承した。

植田教授はまず、2002年以降の景気拡大の特徴について説明。「2002年以降、東アジア向けの輸出と、それに関連した設備投資主導により景気が回復してきたが、04〜05年には内需主導になった。景気循環における拡大局面と構造問題改善の効果が相互に影響し合い、長期回復へとつながった」と述べた。
続いて、06年第2・四半期以降、日本経済は足踏み状態に入りつつあると指摘。「06年第2・四半期は、内需は好調であったが、東アジア向けの輸出が減速したことにより、全体として経済成長率は弱めになった。続く第3・四半期は、輸出は回復したが、逆に内需が弱まった。特に、消費の減速が著しく、また、設備投資の伸び率も弱まった」と説明した。消費が弱い背景については、「雇用環境が堅調であるにもかかわらず、賃金の伸びが鈍い。賃金の伸びが鈍い理由として、過去10年間の経験から、企業側が賃金引き上げに慎重になっているだけでなく、家計側も、賃金上昇よりも雇用を重視していること、また団塊世代の退職に伴い、平均賃金が低下していることなどが挙げられる。ただし、このまま景気が堅調に推移すれば、いずれ賃金が上昇に転じるであろう」と述べた。

また、金融政策の運営について、現在はまだ金利を引き上げる環境ではないと指摘。その要因として、06年の8月に、消費者物価指数(CPI)の基準が2000年基準から05年基準に改定され、0.5〜0.6%ほど下方修正されたこと、原油価格上昇の影響が剥落していくことなどにより、CPIの動きが弱いことを挙げた。さらに消費の低迷を中心に景気情勢がいまひとつであることや、これらを含めて、もう少し上向きの動きを確認してからでも遅くはないことなどを指摘した。

【経済第一本部経済政策担当】
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