日本経団連タイムス No.2843 (2007年1月18日)

提言「日本型成長モデルの確立に向けて」公表

−わが国の持続的成長達成へ具体的方策取りまとめ/新ビジョンの最優先課題に


日本経団連は16日、わが国が持続的成長を果たすための具体的方策を取りまとめた提言「日本型成長モデルの確立に向けて」 <PDF> を公表し、関係各方面に建議した。その内容は、1日に公表したビジョン「希望の国、日本」に最優先課題のひとつとして盛り込まれている。提言の概要は次のとおり。

1.中長期的な成長目標に係るコンセンサスの形成

持続的成長なくして生活水準の向上、雇用機会の確保、財政や社会保障制度の維持・存続は困難である。官民で中長期的な成長目標のコンセンサスを形成した上で、わが国経済の潜在力を最大限発揮するための総合的な政策を展開する必要がある。

2.潜在成長力の強化

持続的成長の実現に向けては、潜在成長力の強化が不可欠である。いかに高い成長目標を掲げようとも、十分な潜在成長力が確保されない限り、供給面の制約に直面し、その達成は困難となる。具体的な方策としては、(1)研究開発の促進、研究成果の円滑な産業化、知的財産政策の強化、国際標準化の推進などを通じたイノベーションの創出(2)人材の質の改善、資本装備率の引き上げなどによる生産性の上昇(3)潜在的労働力の顕在化、海外からの人材の受け入れなどを通じた労働力人口減少の影響の緩和――に取り組まねばならない。

3.需要の創出・拡大

潜在的な成長力を高い経済成長に結実させるためには、十分な水準の有効需要が必要となる。このため、まずEPA(経済連携協定)の締結促進などを通じ、アジアを中心とする海外需要の拡大に取り組まねばならない。国内では、(1)高付加価値商品の市場投入による既存市場の深化・拡大(2)官製市場など開放が遅れている分野の需要の引き出し(3)住宅投資の推進、コンテンツ市場の拡大、観光市場の振興、家事労働の市場化・製品化などによる成長のポテンシャルが高い分野の需要の拡大――が求められる。

4.安定的な物価上昇の実現

デフレは、実質金利の上昇や実質債務負担の増大など、経済に多岐にわたる弊害をもたらす。そのため、経済ならびに物価に細心の注意を払いつつ、デフレ回避型の金融政策を実施することが求められる。

5.2015年の経済・産業構造の展望

マクロ経済モデルによる検証を行った結果、以上の諸改革を着実に実行することで、わが国経済は2006年から2015年までの間、実質で年平均2.2%、名目で同3.3%の成長を実現することが可能と考えられる。この間の1人当たり国民所得は、2015年時点では2005年比で3割程度増大する。また、潜在国民負担の国民所得比は、2015年でも45.9%と、めざすべき目標とする50%以下の水準で推移する。
今後の産業構造について、2003年から2015年までの実質産出額の年平均伸び率は、産業全体で2.0%弱となる。内訳別では、製造業が2.0%強、サービス業(注)が2.4%程度と、わが国経済の成長を力強く牽引し、非製造業がしっかりと下支えする。

=サービス業とは、狭義のサービス業に運輸業、通信業を加えたもの。
【経済第一本部経済政策担当】
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