日本経団連タイムス No.2843 (2007年1月18日)

提言「成長と財政健全化の両立に向けて」公表

−財政の持続性を確保へ目標と具体策などを提示


日本経団連は16日、提言「成長と財政健全化の両立に向けて」 <PDF> を公表し、政府・与党等関係方面に建議した。同提言は、今後10年程度を見通し、財政の持続性を確保するための健全化目標と、そのために必要となる具体的施策、歳出・歳入一体改革に関する財政シミュレーションを示すものであり、その内容は日本経団連のビジョン「希望の国、日本」に盛り込まれている。

基本的考え方とめざすべき目標

わが国の財政状況は、国と地方を合わせた長期債務残高の水準でみると、依然として先進国中最悪の状況となっており、財政の持続可能性を確保する上で、歳出・歳入改革が喫緊の課題となっている。
そこで同提言では、基本的な考え方として、(1)経済成長と財政健全化の両立(2)小さくて効率的な政府の実現(3)継続的かつ着実な取り組みの重要性――の3点を掲げた上で、めざすべき財政収支の水準として、10年後までに、国と地方それぞれの債務残高対GDP比を安定的に低下させるために必要なプライマリーバランスの黒字幅を確保することを目標としている。

財政構造改革に関する具体的方策

歳出改革に向けた具体的な方策としては、まず公務員制度改革をはじめとした、行政機構自体を抜本的に改革し、簡素で効率的な政府を形成する必要があると指摘した上で、(1)最大の歳出圧迫要因である社会保障制度の一体的改革(2)地方財政の見直し(3)公務員人件費のさらなる削減(4)わが国経済の成長を支える分野に対する重点的資源配分――といった具体的な歳出改革を求めている。

歳出・歳入一体改革の経路

同時に、歳出・歳入一体改革の経路と選択肢を示すため、名目成長率と金利を固定したモデルにより、財政シミュレーションを行った。
2015年度までの10年間を2つの期間に分割し、2011年度までは「基本方針2006」で定められた歳出削減プログラムの着実な実行に加え、2009年度に予定されている基礎年金国庫負担割合の引き上げ等を踏まえて、消費税率を2%引き上げることを想定している。この場合、2011年度のプライマリーバランスの対GDP比は、国・地方ともに黒字となるが、国の債務残高対GDP比を安定化させるには至らず、さらなる歳出・歳入改革を行う必要がある。
そこで、2015年度までについて、社会保障制度の改革を通じて、この間の社会保障給付の伸びを、高齢化の進捗度合いを加えた成長率の範囲内に抑制することとした上で、消費税率に換算して3%程度の歳入増を図るか、あるいは社会保障関係費以外の歳出を毎年4.6%ずつ削減することを想定する場合、債務残高対GDP比は、2015年度時点で、国と地方合計でも、また国単独でも債務残高対GDP比が安定的に低下し、財政の持続性が確保されると試算している。

【経済第一本部経済政策担当】
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