日本経団連タイムス No.2843 (2007年1月18日)

NICCの長期招聘研修「アジア諸国人事労務管理者育成事業」が修了式

−9カ国17名、日本企業の経験学ぶ


日本経団連の関連組織である日本経団連国際協力センター(NICC、御手洗冨士夫理事長)が毎年実施している長期招聘事業「アジア諸国人事労務管理者育成事業」が、8カ月の研修日程を終え、先ごろ修了式を行った。同事業は、アジア各国の経営者団体の推薦を受けた各国企業・経営者団体の人事労務担当中堅幹部を日本に招き、人事労務管理を中心に日本企業の経営管理全般について研修を行うもので、17回目を迎えた2006年度は、カンボジア、中国、インドネシア、ラオス、マレーシア、モンゴル、フィリピン、タイ、ベトナムの9カ国から平均年齢32歳の、いずれも企業・経営者団体の人事担当係長、課長、部長クラスの17名が参加し、06年5月から12月まで研鑽を積んだ。

各国で、雇用する人材の質や従業員の安定的な確保と育成が課題となっており、修了に当たって各研修生がまとめたレポートには、人材開発、キャリア開発など、人材育成に関するテーマやモチベーションに関するテーマが多くみられ、日本で学んだ知識や経験を、これらの課題克服に活用したいという意欲をうかがわせるものであった。昨年12月15日、都内で開催された修了式では、藤田弘道NICC評議員から、修了証書が研修生1人ひとりに手渡され、列席の厚生労働省国際課国際協力室、関係国の大使館、企業内研修協力企業・経営者団体の関係者や、講師から8カ月間の労苦をねぎらう暖かい拍手が送られた。

修了証書授与に先立つ祝辞の中で藤田評議員は、「グローバル化の進展に伴い企業の競争はますます激しくなるが、競争力を高めるには『人材力』を持つ組織・文化を構築することが大切である」と述べた上で、「帰国後は、研修で学んだ貴重な経験を活かし、企業・経営者団体の人事労務管理者として、人づくりのリーダーとなって、大いに活躍してもらいたい」と激励した。
これに応え、修了者を代表してピヤ・デチャシリ氏(タイ)が謝辞を述べ、「来日時は日本の言葉も文化もわからず、とても不安だったが、寮生活に始まり、講義や企業内研修などあらゆる場面で触れ合う日本の方たちが一生懸命教えてくださったことは死ぬまで忘れない。帰国を前に、心の中は暖かい」と、感想を語った。

修了式後に開かれた歓送会では、紀陸孝NICC監事が、「研修成果を活かしての今後の活躍を期待したい。また、研修で培ったネットワークを今後も大切にしていってほしい」とあいさつし、支援企業やホームステイ先などの関係者100名余りが研修生の“卒業”と、その前途を祝った。

◇ ◇ ◇

「アジア諸国人事労務管理者育成事業」は、アジア各国企業・経営者団体の人事労務担当中堅幹部を対象に実施しているもので、日本の経営管理全般について、集中講座と企業内研修で理解を深め、所属企業・経営者団体の経営に役立ててもらうことを目的としている。
長期滞在で、多くの日本人と交流し、日本文化に触れてもらうことで、日本理解も深まり、それが、日本とのビジネスにも活かされていく。
1990年に開始以来、修了者は、累計で317名となった。これまでの修了者の中には組織のリーダーとして、また政府や経営者団体主催のセミナー等の講師として、活躍している者も多く見られ、各国政府関係者や経営者団体および産業界から大いに感謝されている。

研修コースの中核部分をなす企業内研修は、06年度は21社2団体がそれぞれ、1〜3週間にわたって研修生を受け入れ、また、12の企業が研修生に寮を提供するなど、産業界がひとつになって同事業の実施のための支援協力を行っており、日本の国際協力活動を担う産業界独自の事業として評価されている。
NICCでは、「この事業は、企業の支援と協力で成り立っており、今後も、できるだけ多くの企業の参加を得たい」としている。

Copyright © Nippon Keidanren