日本経団連タイムス No.2844 (2007年1月25日)

第109回日本経団連労使フォーラム

−産別労組リーダー講演/今次労使交渉に臨む方針


2日目の産別労組リーダー講演では、自動車総連の加藤裕治会長とUIゼンセン同盟の落合清四会長が、「今次労使交渉に臨む方針」について、それぞれ説明した。

「労働の質の向上」としての月例賃金への適正な反映など

■加藤会長

まず自動車総連の加藤会長は、自動車産業全体としては、グローバル化による国際競争が激化する中で、海外市場の拡大を背景に好況を維持し、設備投資や研究開発費などに対する積極的な将来への投資が盛んであると産業情勢を分析。一方、業種間だけでなく同一業種内の業績格差の顕在化や、非正規従業員の急増などで労働条件でも二極化が進行していると指摘した。
また自動車総連は、自動車・自動車部品メーカーはじめ輸送部門、販売部門を含む約1200組合からなり、そのうちの7割が300人以下の組合であることなど各社事情が異なることから、「統一した要求はできかねる」と説明。その上で、「2007年闘争」の基本方針について、(1)「労働の質の向上」としての月例賃金への適正な反映(2)従業員が生み出す付加価値の高さに見合った賃金水準への改善(3)産業の魅力アップ(4)産業内の格差是正――を柱とした取り組みを挙げるとともに、「経済指標の好転や賃金の社会性を重視した社会的な広がりが持てるような労使の話し合いを進めたい」との姿勢を示した。

賃金引き上げ要求基準については、「昨年を上回る」ことを目標に、「各組合が、経済指標の好転等を踏まえた賃金水準の向上や格差・体系是正に向けて、賃金改善分を設定すること」を基本方針に据え、個別賃上げについては、「技能職中堅労働者(中堅技能職)の現行水準を維持した上で、賃金改善分を設定する」との見解を示し、昨年同様、要求額の具体的な明示はしなかった。
また今後の労使交渉・労使協議について、「社会的役割を担う取り組み」と位置付けた上で、「単なる賃上げ交渉にとどまらず、日本の経済構造や雇用についても労使で議論する場にすることが重要」と、改めて労使交渉・労使協議の意義を強調した。

統一賃金闘争などを柱に基本的要求は連合方針踏襲

■落合会長

続いて登壇したUIゼンセン同盟の落合会長は、「2007春季労働条件闘争」方針の枠組みとして、(1)統一賃金闘争(2)働き方の改善――を柱に据え、基本的な要求は昨年同様、連合の考えを踏襲すると述べた。6業種からなる傘下組合の状況について、その多くが定昇制度を持たない中小企業であることや、パート労働者など非正規従業員が約4割を占めていることなどを踏まえ、統一賃上げ要求については、(1)経済成長を反映した適正な月例賃金の引き上げ(2)格差是正と最低賃金の協定化(3)パート労働者等の処遇改善(4)賃金制度・体系の確立――を基本的な考えとして挙げた。

具体的な賃金引き上げ要求に関しては、連合の主張する「1%以上」とするが、賃金体系が維持されていない中小については、「7000円以上」を統一要求するとの見解を表明。パート労働者については、正規従業員との均衡を図ることが望ましいとした上で、「時間当たり、昇給・昇格分+1%以上」または「同3%、30円」との基準を提示した。
またUIゼンセン同盟の調査で、「職場の課題」の上位を「人材不足・要員不足」が占めたことを紹介。その上で、パート労働者の処遇改善や改正男女雇用機会均等法への対応、労働時間管理、ワーク・ライフ・バランス――など、働き方の改善に向けた取り組みも行う方針を示した。

さらに「労使交渉・労使協議は“春の討論会”ではなく、あくまでも闘う場、“春闘”である」と、経営側に対峙する“姿勢”を示す一方、「労使は協力し、時には対立することを繰り返すことで信頼関係が構築できる」と、労使交渉の重要性を強調した。

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