日本経団連タイムス No.2845 (2007年2月1日)

ゴア米国前副大統領の特別講演会を開催

−地球環境破壊防止へ、全世界の迅速な行動を強調


日本経団連は1月15日、東京・大手町の経団連会館で、アルバート・ゴア米国前副大統領の特別講演会を開催した。ゴア氏は地球温暖化の進行に警鐘を鳴らすため自ら出演し、制作したドキュメント映画「不都合な真実」の日本公開に当たって来日した。席上、地球環境破壊の防止に向けて、全世界がいますぐ行動をとらなければならないことを強調した。

開会あいさつで御手洗冨士夫会長は、世界共通の課題である地球環境問題には、政府・産業界・社会などさまざまなセクターが協調する形で、地道な取り組みを進めることが不可欠であると指摘。日本経団連では、地球温暖化防止の国際枠組みである京都議定書の目標達成に向けて、「環境自主行動計画」を策定し、産業部門、エネルギー部門のCO2排出削減に、着実な成果を上げてきていることを紹介した。一方、国際的な動きについては、「京都議定書第1約束期間が終了する2013年以降の、いわゆるポスト京都議定書の国際的な枠組みの議論が始まっている。特に、CO2排出削減義務を負っていない米国、中国、インドといった主要排出国の動向が注目される」と指摘した。

映画「不都合な真実(予告編)」上映の後、登壇したゴア氏は、CO2による地球温暖化がもたらしている異常気候や地球環境の変動―大型ハリケーンや台風の頻繁な発生、集中豪雨の増加、暖冬、洪水と旱魃の発生、氷河の氷の消滅、海面上昇など―は地球の気候の危機が差し迫っているシグナルであると指摘。その上で、「地球の気候の危機は、われわれの子どもや孫の世代だけでなく、われわれの世代にも影響する問題であり、われわれには道徳的責任がある。また、こうした地球の異変は、地球の危機に対して、智恵をもって対応せよという呼び掛けでもある」と述べた。
さらにゴア氏は、世界を先導する形で、日本の産業界が、地球環境問題に取り組んでいることを高く評価した上で、米国が京都議定書を未だ採択していないことに触れ、「今後、米国が国際枠組みに参加し、日本が主導的な役割を継続すれば、中国やインドなどの諸国も枠組みに参加するだろう。米国の政策が変わるよう、働き掛けていきたい」と語った

続く質疑応答では、参加者から「地球温暖化の防止のためにはすべての国の参加が必要だが、そのためには最も影響力が大きい米国が、イニシアチブをとる必要がある」「地球環境破壊が進行するスピードに問題解決に向けた行動が追いつくのか」といった意見や質問が示された。これに対してゴア氏は、「米国では政府の政策に対し、経済界の意見が非常に大きな影響力を持っている。日本経団連には、米国の経済界が地球温暖化防止に向け、積極的に取り組むよう、働き掛けてほしい」「地球の危機を回避する行動をとることに遅すぎるということはない。今行動をとらなければ、最悪の事態を回避できない。日本の産業界には世界の産業界をリードすることを期待する」などと述べた。

【総務本部総務担当】
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