日本経団連タイムス No.2846 (2007年2月8日)

デ・ブアUNFCCC事務局長と懇談

−温暖化対策めぐり意見交換


日本経団連は1月26日、東京・大手町の経団連会館で国連広報センター(幸田シャーミン所長)の協力を得て、今後の地球温暖化対策のあり方等につき、イヴォ・デ・ブア国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長と懇談した。冒頭、鮫島章男日本経団連環境安全委員会共同委員長が、「地球温暖化問題を最重要課題の1つと考えている。日本経団連では1997年に『環境自主行動計画』を策定し、多くの業界、企業が参加して取り組みを進めた結果、産業部門のCO2排出量は着実に減少している。真に地球規模で効果ある温暖化対策を講じるためには、2013年以降の国際枠組のあり方が非常に重要であり、より良い体制の構築に向けて、多様なセクターの関係者と議論を深めつつ、産業界の立場から提案をしていく」とあいさつした。

幸田所長のあいさつに続き、デ・ブア事務局長から説明を聴取。「気候変動問題は当初、環境問題と受け止められていたが、現在では、エネルギー安全保障、経済政策、国際貿易と密接な関連があると理解されているので、経済界がどのように行動しようとしているかを認識することが重要だ」との所見を述べた後、「日本は京都議定書において最も厳しい目標を設定し、しかも日本の産業界が非常に高いエネルギー効率を実現しているがゆえに、京都議定書の目標達成への貢献は大変厳しいものであるため、日本の産業界との対話は重要であると考えている」との見解を示した。また、温暖化対策をめぐる動向について、気候変動問題は世界中で関心が高まっており、新たな段階に移行しようとしているとの認識を示すとともに、今後の課題は、(1)環境の観点から高い目標を実現すると同時に、コスト効率の高い手法を開発すること(2)中国、インド、ブラジルなどの途上国を将来枠組における取り組みに参加させること――であると述べた。
具体的には、環境と経済との調和に関しては、「投資判断に資する長期的な予測可能性の提供」ならびに「コスト効率的な解決策が市場で発見される市場の完全な柔軟性の確保」、途上国の新たな枠組への参加に関する重要課題としては、(1)助成金制度のない、途上国に対する新たなインセンティブの付与(2)セクトラル・アプローチの導入(公正な国際競争の確保)(3)途上国のエネルギー効率向上への貢献に対するクレジットの付与など、政策ベースのCDM(クリーン開発メカニズム)の導入(4)現行のプロジェクトベースのCDMの改善――の4点を指摘した。
最後にデ・ブア事務局長は、米国企業の中には、キャップ・アンド・トレードの導入を政府に求める声もあるが、米国の状況に最も適していると考えているからである、との見方を示した。

引き続き行われた懇談では、日本経団連側から、「セクトラル・アプローチが重要であり、日本はAPP(アジア太平洋パートナーシップ)に取り組んでいる」「不合理な国別キャップや、その下でのキャップ・アンド・トレードには反対である」「途上国の温暖化対策に貢献することを考えているが、知的財産権の保護など障害は少なくない」との指摘があった。
これに対して、デ・ブア事務局長から、「APPは興味深い試みであり、政府間のみならず企業同士の協力でもある。唯一の欠点は、マーケットベースで京都メカニズムを使う機会を提供する場でないことだ」「エネルギー効率は、人口1人当たりではなく、製品単位当たりのエネルギー消費量で測るのが望ましい。中国が適切なエネルギー効率基準を設定することは、温暖化対策にとって意義が大きいと思う」「キャップ・アンド・トレードか非キャップ・アンド・トレード手法かという議論があるが、キャップ・アンド・トレードを志向している国が多い。各国が自国にとって最適な手法を採用するのが望ましく、日本に対して、キャップ・アンド・トレードの導入を求めるつもりはない」などのコメントがあった。

【産業第三本部環境担当】
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