日本経団連タイムス No.2846 (2007年2月8日)

雇用委員会を開催

−「労働市場改革の展望―労働者派遣制度を中心に」/小嶌・大阪大学大学院教授から聴取


日本経団連は1月24日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会(鈴木正一郎委員長)を開催し、小嶌典明大阪大学大学院高等司法研究科教授から、「労働市場改革の展望―労働者派遣制度を中心に」と題した講演を聴取した。小嶌教授の講演の概要は次のとおり。

1.最終答申(規制改革・民間開放の推進に関する第3次答申)からみた法改正の限界

紹介予定派遣は事前面接ができるようになったが、それ以外の派遣労働者については、事前面接が認められていない。派遣労働者の中には、派遣先のことを知っておきたいとの声もある。派遣先におけるミスマッチから生じる中途解約等の問題の発生を未然に防ぐためにも、事前面接の解禁が必要である。
26業務は雇用契約申し込み義務が課せられたことで派遣先が3年を超えて同一の派遣労働者を使用することに慎重になり、その結果、派遣労働者の雇用がかえって不安定になるとの懸念もある。
従来も26業務について3年の期間制限があったが、派遣先に対して何らかの義務を課すものではなく、行政指導に基づき、派遣元に3年を超えて同一の派遣労働者を同一の派遣先に派遣しないようにといった指導があったに過ぎない。現行法とは異なり、常用型の人に対しては規制の対象外であったので、26業務については、規制強化となった。
派遣労働の規制緩和を進めてきたが、他方で規制が強化される。現状には閉塞感を感じており、こうしたことでは抜本的な見直しはできない。発想の転換が必要だ。

2.求められる発想の転換―新法(共通ルール)の模索

企業の現場から現行制度が乖離しているという現実をみるべきだ。労働者個人と企業、双方の派遣に対するニーズは恒常化している。派遣という働き方を否定的にみずに、あるがままにこれらの働き方をみるべきである。
労働者派遣法は、派遣労働者を保護し、派遣が有効活用されるという観点から抜本的見直しを図るべきだ。業務の種類による区分や、派遣受け入れ期間の制限もないといった無理のない制度の下で、派遣労働者の就業条件の確保・整備のみを追求するための法律に改めるべきである。
また、ステップアップを指向する派遣労働者に対して、派遣元と派遣先を含めた三者間で話し合いの場を設ける等の手立ては十分に考えられる。その際、派遣先の労働組合が果たすべき役割は大きい。
11月30日開催の経済財政諮問会議で提出された有識者議員提出資料では、「多様な働き方に対応した共通ルールはどうあるべきか」について言及している。個人的には、派遣法の具体的な見直しについて、パート労働法改正案をベースにできないかと考えている。
派遣先における雇用を希望する者に対しては、同改正案にある、通常の労働者への転換の措置推進義務などをベースに考えられないか。苦情処理や紛争解決の援助の仕組みについても、雇用機会均等法をモデルとする同改正案の考え方は参考になる。性差別や年齢差別についても、その限りにおいて、派遣先を派遣労働者を雇用する事業主とみなして均等法等を適用すれば足りる。派遣についてだけ、特定行為を禁止する理由は何もない。

【労政第一本部雇用管理担当】
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