日本経団連タイムス No.2847 (2007年2月15日)

豪州へミッション派遣

−ハワード首相らと懇談


日本経団連は御手洗冨士夫会長を団長とするミッションを5日から7日にかけて豪州に派遣、ハワード首相、ダウナー外相、マクファーレン産業・観光・資源相、コステロ財務相、トラス貿易相、ならびに豪日経済委員会首脳と日豪経済連携協定(EPA)を中心に懇談した。ミッションには、宮原賢次、武田國男、米倉弘昌、三村明夫の各副会長、土橋昭夫アジア・大洋州地域委員長が参加した。今回のミッションは、昨年12月12日、日豪両国首脳がEPA交渉開始で合意した機をとらえて派遣された。訪問先での懇談概要は次のとおり。

■日豪EPA

資源・エネルギーの安定供給を含む包括的で質の高いEPAが早期締結されるよう、日本の経済界としても努力していく所存であることを豪州側に伝えた。また、日本には農産品の取り扱いなど困難な問題があることを説明し、豪州側の理解を求めた。これに対し、豪州側からは、一様に、アジアの友好国であり、最大の貿易相手国である日本との経済関係の強化、EPAの締結に対する並々ならぬ熱意が示された。農産品の取り扱いなど日本が抱えるセンシティブな問題については、豪州側も理解を示した上で、農業を含むすべての事項を交渉の対象とし、その中で取り扱いについて議論することが重要との姿勢を示した。
日豪EPAの効果として期待される資源・エネルギーの安定供給については、民間企業による自由な取り引きを引き続き基本としつつ、豪州の資源・エネルギー分野の投資環境改善の一環として投資許可対象下限額の引き上げ等を豪州側に求めた。これに対し、豪州側からは、日豪EPA交渉の中で議論することを前提とした発言があった。
なお、豪州経済界からは、両国間の貿易におけるサービス分野の重要性について指摘があった。

■日豪租税条約の改正等

両国の経済関係強化のための方策として、日豪租税条約改正交渉の開始について豪州経済界から言及があった。ミッション側からは、豪州政府に対し、(1)両国の経済交流の活性化に資する日豪租税条約の改正(2)移転価格税制に関する日豪税務当局の協力――を要請した。これに対し、豪州政府からは、(1)米国、英国と同様、日本についても条約を改正し、公平な扱いができるようにしたい(2)移転価格税制については、両国税務当局間で生産的な解決をめざしてほしい――との発言があった。

■アジア太平洋地域の経済統合の動向

豪州、中国、米国など主要な国々との経済連携を進めながら、最終的にAPEC全域で自由貿易圏を構築することが望ましいとの考え方をミッション側から提起した。これに対し、豪州経済界からは、アジア太平洋地域の経済統合に関連して複数の機関が存在、活動しており、経済界による支援を円滑にするためにも、それら機関の活動の重複排除、役割分担の明確化などを通じた効率化が必要との指摘があり、ミッション側も基本的な方向性について賛同した。

■WTOドーハ・ラウンド交渉の推進

ミッション側から、貿易・投資の自由化を推進するための車の両輪として、EPAの推進と並んでWTOを中心とする多角的自由貿易体制の維持・強化の必要性を強調した上で、ドーハ・ラウンド交渉の早期妥結に向けて、今春までに大筋合意に達する必要があると指摘した。これに対し、豪州政府からは、ダボスにおける非公式閣僚会合で交渉の本格的再開に合意したことは、ラウンド成功に向けての第一歩と位置付けられるが、実際にラウンドを成功に結びつけるには突破口が必要であり、各国がそれぞれ一段の自由化措置を講じる必要があるとの指摘があった。今春までに何らかの成果が必要との認識では一致した。

■地球環境問題への対応

ミッション側から、温暖化について、今後、(1)米国、中国、インドなど主要排出国が参加する実効性ある国際的な枠組みの必要性(2)経済と環境との両立の必要性(3)途上国にも配慮した柔軟性のある枠組みの必要性――を指摘するとともに、主要排出国も参加する実効性ある枠組みとしてAPP(アジア太平洋パートナーシップ)を位置付け、その中での日豪の協力を強化していきたいと説明した。また、わが国経済界におけるCO2排出削減のための自主行動計画の推進について説明した。ポスト京都議定書(2013年以降)においては、多くの国が参加できる枠組みが必要との認識で豪州側と一致した。わが国経済界による自主行動計画の実施についても、望ましい取り組みとして高い関心が示された。

【国際第一本部貿易投資担当】
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