日本経団連タイムス No.2847 (2007年2月15日)

情報通信委員会を開催

−通信・放送の融合問題で説明聴く


日本経団連の情報通信委員会(石原邦夫共同委員長、榊原定征共同委員長)は1日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催、国際IT財団専務理事の中村伊知哉・慶應義塾大学教授から、同委員会の今後の重要な検討テーマである、「通信・放送の融合をめぐる諸問題」について説明を聴いた。また、通信・放送政策部会が取りまとめた報告「IP時代における通信・放送政策のあり方」を委員会報告として了承するとともに、同委員会の組織再編・人事案および今後の活動計画を承認した。

まず、中村専務理事から、IP化やデジタル化、ブロードバンド化等の技術革新により、通信と放送の間のネットワークの相互利用や、ワンセグに代表される共用端末の登場等、融合が進んでいる現状が紹介された。
中村氏は、通信・放送の融合の中核は、放送コンテンツをいかに通信ネットワークで流通させるかにあると強調。日本はネットワーク整備が進んでいる一方、映像コンテンツの大部分を占める放送コンテンツの2次利用は、わずか8%にとどまり、ようやく放送局等が、放送コンテンツの通信ネットワークでの配信に前向きになってきたが、それでも遅かったと指摘。「米国では、通信・放送業界やコンピューター、インターネット業界が互いに提携し、世界的なコンテンツ配信ビジネスを展開している。諸外国では既に実現しているサービスが、日本では実現されていないことも多く、日本は世界一のネットワーク大国になったにもかかわらず、サービス後進国になってしまったという危機感を持っている」と述べた。
その上で、このような状況下で政策のポイントとなるのは、コンテンツ規制やハード・ソフト一致原則等、通信と放送で全く異なる現行制度の再設計と、NHKやNTT等特殊法人に対する自由の許容であると指摘。
また、政府の「通信・放送の在り方に関する懇談会」報告書(2006年6月公表)については、著作権法改正、電波の有効利用、伝送路やプラットフォーム、コンテンツ等レイヤー区分に対応した法体系を提議する等、意欲的な内容となっていると評価した。
続く意見交換では、通信・放送の融合が進む中、単なる欧米の追随ではなく、日本としてどのような理念を掲げるのかという委員からの質問に対し、中村氏は、「国は理念先行型の通信・放送行政ではなく、民間が自由に活動できるような規制緩和をすることが重要である」と答えた。

また、当日は、通信・放送政策部会で取りまとめた報告「IP時代における通信・放送政策のあり方」を審議し、委員会として承認した。同取りまとめは、企業ユーザーの立場から、わが国の産業全体の国際競争力強化に向け、IP時代における通信・放送政策のあり方についての基本的考えを示したものである。その中で、現行の事業・メディアごとの数多くの法律を見直し、通信・放送共通のネットワークの枠組みとすること、およびコンテンツは原則自由で民間の自己規律に委ねること等を提案するとともに、通信・放送に関する独立行政委員会の設置を求めている。
今後、同部会においては、同取りまとめを踏まえ、通信・放送の新たな法制度のあり方を中心に、情報通信産業の発展に向けた諸課題の検討を進める予定である。

最後に、情報通信委員会の組織再編および人事、今後の活動について報告があった。これまで、同委員会は、通信・放送政策部会、情報化部会、高度情報通信人材育成部会の3部会体制で活動してきたが、インターネットのガバナンスや情報セキュリティーが、国際社会の重要テーマとして、国連等で活発に議論されるようになり、日本経団連として国際的な情報発信と枠組みづくりに従来以上に積極的に関与していくため、国際問題部会(加藤幹之部会長)を再開し、4部会体制とするとともに、各部会のワーキング・グループ等を再編することが承認された。

【産業第二本部情報通信担当】
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