日本経団連タイムス No.2849 (2007年3月1日)

税制委員会企画部会を開催

−法人税制改革をめぐる諸課題について意見交換


日本経団連は2月19日、東京・大手町の経団連会館で税制委員会企画部会(田中稔三部会長)を開催し、財務省主税局で法人税制立案を長らく担当し、現在、日本租税総合研究所の法人税法等基本問題委員会委員長である朝長英樹氏から、法人税制改革に向けた諸課題について説明を受けるとともに意見交換を行った。

政府・与党は、2007年度を目途に消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させるべく、今年秋以降に本格的な議論を行うこととしている。日本経団連では、年初に公表した「希望の国、日本」において、国際的な整合性を踏まえた法人実効税率の引き下げを含む税制抜本改革を提言、税制委員会企画部会が中心となって実現に向けた具体的内容の検討を進めており、今回の会合はその一環。朝長氏からの説明概要は次のとおり。

1.法人税制改革の基本方針

企業活動のインフラである会社法や企業会計制度が大改革を終えようとしているのに対し、法人税制は、依然として多くの問題を抱えているにもかかわらず、02年の連結納税制度創設以降、大きな改革が行われていない。所得計算として適切で、新たな事業形態や経済取引実態に即した制度をめざし改革を急ぐ必要がある。
制度改革に当たっては、立案の段階で広く意見を求めるなど、より透明なプロセスとすべきである。

2.法人税制改革の各論

(1)事業体税制

法人税制は株式会社を中心に構成されているが、持分会社や信託、任意組合、匿名組合といった多様な事業形態を選択できるよう税制面の整備を図ることが急務である。また、今後の社会を支える民間の社会貢献活動を促進することが極めて重要であり、非営利法人に対する税制は、収益事業を行えば法人課税が行われるという現行の仕組みを抜本的に改め、営利事業による所得に対して課税を行う法人税本来のあり方を基礎として再構築すべきである。

(2)租税回避防止税制

租税回避を防止するために、制度本来の使い勝手を悪くしては本末転倒であり、納税者の予測可能性を確保できる租税回避防止税制が重要である。

(3)資産評価の方法

資産の評価をどのように行うべきかは、法人税制のみならず税制全体の大きな課題であり、資産全般の評価基準の作成や評価資格制度の創設が必要である。

(4)引当金

過去の法人税制改革の過程で、本来計上すべき債務である退職給与引当金や賞与引当金が廃止されているが、正しい所得計算を行うために、これらの是正が必要である。

(5)受取配当益金不算入制度

課税済みの所得から配当された金額に対する二重課税を排除するため、受取配当金の益金不算入制度を見直すべきである。その際、国内の受取配当のみならず、外国からの受取配当の取り扱いも含めて抜本的な検討を行う必要がある。

(6)国際税制

企業活動の国際化を背景に、外国税額控除制度や移転価格税制、タックス・ヘイブン税制の抜本的な見直しが一層重要になっている。

(7)その他

01年、02年に創設された組織再編税制、連結納税制度について、再度見直しを行い総仕上げをすべきである。

◇ ◇ ◇

税制委員会では、引き続き、地方税のあり方や、諸外国の税制改革の動向などにつき有識者を招いて検討を進め、税制抜本改革の諸課題に関する考え方を取りまとめていく予定である。

【経済第二本部税制・会計担当】
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