日本経団連タイムス No.2850 (2007年3月8日)

タリチャーヌ・ルーマニア首相来訪/渡副会長と意見交換

−経済情勢や経済政策などを説明/日本企業進出に期待感示す


日本経団連の渡文明副会長は2月22日、東京・大手町の経団連会館において、来日中のタリチャーヌ・ルーマニア首相の訪問を受け、懇談した。

冒頭、渡副会長は、ルーマニアが今年1月、EUに加盟したことに祝意を表明、「EUの拡大はビジネスの拡大をもたらすものでもあり、ルーマニアのEU加盟を歓迎する。今日は、ルーマニアと日本との関係のみならず、ルーマニアのEU加盟がもたらす経済効果や、ユーロ導入の見通しなどについて話を伺いたい」と述べた。

これを受けてタリチャーヌ首相は、EU加盟を控えて、ルーマニアへの海外からの直接投資が昨年増加したと説明した。その上でルーマニアの経済情勢や経済政策などについて説明、(1)経済は拡大を続けており、06年のGDP成長率は8%超、2ケタを記録していた消費者物価上昇率は4.7%まで下がった(2)このような成長を支えたのは、税制改革である。法人税(25%)、所得税(40%)を、一律16%に引き下げたことが奏功し、税収は12%増、生産性は14%向上、政府債務残高はGDP比で18%まで下がった。失業率も5%まで低下し、世界銀行からは改革に積極的な国として評価されている(3)今後は他のEU加盟国との格差をなくすため、農業、インフラ、医療・健康、教育・研究の分野の改革を進めたい(4)ユーロの導入は、2012〜2014年頃になるのではないかと予想している――と述べた。
また、日本の産業界、企業への期待については、(1)自動車産業へEU諸国からの投資が増えており、ルーマニアにとって重要な産業となることが期待される。既に日本企業が進出し、国内に部品を供給するとともに輸出にも貢献しているが、そのような投資が続くよう努力していきたい(2)エネルギー分野では政府企業の民営化を積極的に進めているので、日本企業もパートナーとして参加してもらいたい。また、リサイクル可能な資源の開発にも力を入れている(3)情報処理産業が発展し、経済全体に占めるウエートが高まっている。年率40%の勢いで伸びており、ソフトウエアの分野では純輸出国となっている(4)科学技術分野の研究の推進が重要な課題となっている。国内には科学技術の研究で著名な大学があり、多くの若者が活動している。この分野で、日本は優れており、そのノウハウを学ぶなど、日本とは多くの分野で協力を進めていきたい――などの点を挙げた。
また、同席していたベルチャーヌ運輸・建設・観光相からは、日本から欧州への輸出に当たって、ルーマニアの黒海沿岸経由、ドナウ川を利用すれば輸送距離を大幅に短縮することができるとの説明があった。

これらの説明を受けた渡副会長は、日本企業が海外への直接投資を行う際には、「法人税の水準」「人材の質・コスト」「立地条件」の3つがポイントになると述べた上で、「ルーマニアの法人税率は日本に比べ、16%と低い。優れた人材、日本語が堪能な人材も多いと聞いている。本日のタリチャーヌ首相の説明を会員企業にも伝えたい」と語った。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
Copyright © Nippon Keidanren