日本経団連タイムス No.2852 (2007年3月22日)

「知的財産推進計画2007」策定へ提言

−世界特許構築に向けた取り組み強化など7課題を取り上げる


日本経団連は20日、「『知的財産推進計画2007』の策定に向けて」<PDF>と題する提言を発表した。同提言は、政府の知的財産戦略本部(本部長=安倍晋三総理大臣)が取りまとめる予定の「知的財産推進計画2007」の検討に当たって、経済界の意見を表明することを目的としたもので、知的財産委員会(野間口有委員長)と産業問題委員会(岡村正委員長、齋藤宏共同委員長)が協力して取りまとめたものである。

政府の策定する知的財産推進計画も2006年度から改革の第2期に入り、今後は、これまでの改革の実施による成果を検証しながら、さらなる政策の見直しにつなげるPDCAサイクルの確立が重要である。
また、知的財産推進計画において、04年度から06年度を集中改革期間として位置付けているコンテンツ・ビジネスについては、これまでの改革の成果を踏まえ、多様な関係者が連携し、国際的に通用するコンテンツを創造するとともに、新たなビジネスモデルを構築し、マルチユースや国際展開も含めた多様な展開を通じて価値の最大化を図ることが求められている。
今回の提言においては、この1月に日本経団連が取りまとめた「希望の国、日本」の実現と、「知的財産推進計画2006」のフォローアップの両面から、検討が行われた。取り上げた主な課題は次のとおり。

1.世界特許の構築に向けた取り組みの強化

特許制度活用のグローバル化の進展に伴い、特許制度の国際的な調和の必要性が高まっている。日米欧三極における取り組みを軸に、特に米国における先発明主義の見直しの動きを促していくべきである。

2.模倣品・海賊版対策の強化

依然深刻な問題である模倣品・海賊版対策について、今後は経済連携協定(EPA)交渉において、交渉相手国の知的財産制度の基盤整備を促すとともに、罰則強化等の実効的なエンフォースメントを確保するための条項を盛り込むよう交渉していくべきである。

3.国際標準化への戦略的取り組み

昨年10月に、日本経団連として政府に意見を述べたところであり、今後は、日本経団連として経営層の国際標準化に対する理解増進、技術の国際標準化に関する各国の戦略分析などを盛り込んだアクションプランを策定・実施していく。

4.知的財産分野における国際的に信頼される紛争処理機能の充実

企業活動が国際化する今日、知的財産訴訟分野において、世界をリードするような信頼性のあるルールの形成が期待される。技術と法律の双方に知見のある人材の育成と活躍の場の拡充も含め、技術的な価値判断を伴う法律問題を適切に処理するための環境を整備することが求められる。

5.著作権制度の整備

デジタル化・ネットワーク化の中で、劣化しない違法な複製物がインターネットを通じて大規模に流通し、権利者に多大な影響を与えていることから、違法複製物であることを知りながら行う私的使用のための複製は権利制限規定から除外すべきである。

6.コンテンツの創造力の強化

コンテンツの創造力の強化については、(1)プロデューサーやクリエイターなどの人材育成(2)教育体系の確立をはじめとする教育基盤の整備(3)世界最先端の科学技術との連携強化(4)資金調達の多様化に向けた環境整備(5)ライブを含めたコンテンツ産業集積の推進――が重要である。

7.コンテンツの新たな市場の創出と流通の促進

新たな市場の創出と流通の促進については、(1)国際コンテンツカーニバル(仮称)の推進や国際共同制作協定の締結をはじめとする国際展開の推進(2)コンテンツ・ポータルサイトの充実やデジタル・コンテンツの流通環境整備をはじめとするマルチユースの推進(3)観光、教育、健康・福祉等の新市場の創出――が重要である。

【産業第二本部開発担当】
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