日本経団連タイムス No.2853 (2007年3月29日)

少子化問題への総合的な対応を求める提言公表

−新しい社会づくりの方向性を指摘


日本経団連は20日、「少子化問題への総合的な対応を求める」<PDF>と題する提言を公表し、政府・与党などの関係者に建議した。
同提言は、将来に明るい夢と希望を持つことのできる社会づくりを進めることが少子化問題の真の解決策になるとし、少子化問題に対する国全体としての共通認識と新しい社会づくりの方向性を示した上で、企業、政府、国民1人ひとりが取り組むべき事項を取りまとめたものである。

昨年末に公表された日本の将来人口推計の結果(中位推計)では、今後も少子化傾向は続き、2055年の合計特殊出生率は1.26、出生数は50万人を下回るとされている。少子化傾向の現状と見通し、わが国の社会環境、さらには家族や子どもに対する公的支出の水準などを考えると、これまでの国の制度・施策、各企業の取り組みだけでは十分でなく、国民の意識や行動の変革にも踏み込むことが求められる。提言では、少子化問題に対する国全体としての共通認識として、「子どもはわが国の将来を支える社会の宝である」「少子化のこれ以上の進行は健全な経済社会の発展に深刻な影響を及ぼす」など4つの視点を提示し、これらを踏まえた新しい社会づくりの方向性として、(1)子育てに優しい社会づくり(2)柔軟で再チャレンジ可能な社会づくり(3)国全体で人材を育てる社会づくり――の3つを指摘した。
その上で、企業はワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)に主体的に取り組み、政府は幅広い少子化対策を推進し、国民1人ひとりは意識改革を進めていくという役割分担を明確にすることとしている。

企業は、労働力人口が減少する中で、良質な人材を確保し、生産性を上げていくためにも、柔軟かつ多様な働き方の整備や仕事と生活の両立支援を促す職場風土を醸成することが求められており、その基本理念がワーク・ライフ・バランスである。そして企業がワーク・ライフ・バランスを進めていく際の行動指針として、「経営トップのリーダーシップの発揮」「メリハリのある働き方の実現」「主体的なキャリア形成の環境整備」「女性の就労継続支援と再雇用の推進」「企業間の連携」など10項目を提示するとともに、各項目に該当する取り組みを事例集として整理した。
次に、政府が進めるべき少子化対策として、3つの新しい社会づくりの方向性に沿って、要望している。まず「子育てに優しい社会づくり」に関して、専業主婦や育児休業中の世帯も利用できる地域の子育て支援拠点の充実や産科・小児科の体制整備、都市部の保育サービスの充実につながるベビーシッター、保育ママ等に対する公費補助の導入や株式会社による認可保育所の運営を促進する施策の充実などを提案している。「柔軟で再チャレンジ可能な社会づくり」に関しては、働く時間や場所の柔軟化に向けた環境整備、ハローワークだけでなく、民間事業者やNPO、地域の取り組みを生かした子育て期の女性等に対する就労支援の充実などが必要であると指摘。さらに「国全体で人材を育てる社会づくり」に関して、公教育の再生、奨学金制度の抜本的見直しなどを求めている。

最後に提言では、国民1人ひとりの意識改革、国民運動に向けて、(1)地域社会の一員として子育てを応援すること(2)職場・家庭を通じた男女共同参画を推進すること(3)自ら生き方、働き方を問い直すこと(4)子育て支援に取り組む企業を応援すること(5)子どもを持つこと・子育ての素晴らしさを伝えること――を指摘し、国全体で新しい社会づくりに取り組むことの重要性を訴えている。

【経済第三本部国民生活担当】
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