日本経団連タイムス No.2853 (2007年3月29日)

OECD諮問委員会開く

−BIACの活動に関する報告を聴取


日本経団連OECD諮問委員会(本田敬吉委員長)は20日、東京・大手町の経団連会館で、BIAC(OECD加盟国の経済団体により構成される公式の諮問機関、本部=パリ)の2006年度の活動に関する報告会を開催した。OECD諮問委員会では、BIACの各専門委員会やOECDの開催する会合へ企業関係者を派遣し、先進国が直面する重要な課題について、わが国経済界の意見が反映されるよう努めており、06年度は日本から10名の委員が22の会合に参加した。当日はそのうち、雇用・労働・社会問題委員会、技術委員会、情報・コンピューター・通信政策委員会の活動を中心に、それぞれ日本代表委員から報告を受けるとともに懇談した。

冒頭、本田委員長から、日本経団連の推薦を受けた浅見唯弘氏が今年1月にBIACの事務局長に就任したこと、これを機に、BIACとの連絡を密にするとともに、わが国経済界として、BIACの積極的な活用を図っていきたいとの発言があった。

次に、BIAC本部の活動について、まず、雇用・労働・社会問題委員会の活動について、同委員会の長坂健二郎副委員長(萬有製薬会長)から報告があった。委員会の担当分野である雇用、年金、医療のうち、当面は雇用、特に若年者の失業問題、労働需給のミスマッチ、職業訓練など失業問題への対応をめぐって議論が展開されている。医療については、05年秋からヘルスケアに関するタスクフォースを設けて議論しているが、特に薬価について、これを抑制したい国とイノベーションの促進を重視する国との間でOECDの取り組みの方向性について意見の対立がある。BIACは後者の立場からOECDに意見を主張してきたが、当面は各国ごとの現状調査を行い、報告書を取りまとめることで折り合いがついたとの説明があった。

続いて、技術委員会の活動について、同委員会の広崎膨太郎副委員長(日本電気執行役員専務)から説明があった。BIACとしては、OECDに対し、(1)R&Dをイノベーションにつなげていくための政策の推進(2)R&Dの国際化の流れに即した政策の展開(3)オープン・イノベーションの推進(4)研究人材の国際的流動性の把握(5)模造品対策など知的財産権保護環境の整備(6)中国に対するアウトリーチ活動(非OECD加盟国との連携・協力)の強化――を優先事項として提示している。昨年末に取りまとめられた「OECD科学・技術・産業アウトルック」は現時点のOECD科学技術政策委員会の問題意識が反映されている。また、同委員会では、中国の科学技術・イノベーション政策について調査を行っているが、BIACからは知的財産権保護の執行体制の整備等について報告書に盛り込むよう申し入れた。その他、OECDにおいては、R&Dの国際化やオープン・イノベーション、ソフトウェア業界におけるイノベーションに関する調査プロジェクト等が進行している。

情報・コンピューター・通信政策委員会の片岡謙一委員(三菱商事ICT事業本部戦略企画室長)からは、昨年10月に開かれたOECDの次世代ネットワーク(NGN)に関するフォーラムについて、(1)従来の電気通信の世界と異なり、「安くて楽しい」技術が重要であること(2)次世代のエンドユーザーの需要に見合うサービスを提供する必要があること(3)政策を展開する上で技術的中立性等の確保が重要であること(4)通信と放送の融合が進む中で規制のあり方を見直す必要があること(5)自由化を進めても規制の必要な分野はあること(6)インターネットがさまざまな活動のインフラとなる中でセキュリティーの確保が中心的な課題であること――などフォーラム議長の総括コメントを中心に、その模様について説明があった。

最後に、昨年12月に開催されたBIACとOECDのリエゾン会合にBIAC副会長として出席した本田委員長から、その模様が報告された。主なテーマは投資の自由化、エネルギー資源の安全保障であり、前者については近年世界で高まりつつある投資保護主義に関して、BIACからは各国制度の分析、国ごとのピアレビューの必要性などを提言した。後者については、BIACから、効率化のための投資や技術開発の促進の必要性を訴えた。

出席者からは、OECDに加盟していない中国が、OECDの調査結果等を政策の企画・立案に生かしている例などが紹介され、わが国においても、中立的な政策勧告を行う国際機関であるOECD、BIACをより積極的に活用すべきであるとの指摘が聞かれた。

【国際第一本部貿易投資担当】
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