日本経団連タイムス No.2855 (2007年4月12日)

ハーシミー・イラク副大統領と懇談

−日本企業進出呼び掛け


日本経団連は3月22日、東京・大手町の経団連会館でイラク共和国のターリク・アル・ハーシミー副大統領との懇談会を開催、日本経団連からは渡文明副会長らが出席した。

あいさつしたハーシミー副大統領は、多くのイラク国民が、フセイン政権崩壊を契機にイラクが民主化され繁栄するという希望を持っていたが、事態は困難を極め、復興への道筋はいまだ過渡期にあると現状を分析。その上で、経済開発に120億ドルの予算を計上したことや、国際協約の枠組みの中で多くの国から資金提供を受ける予定であることに触れ、今後の復興への足掛かりとしたいとの期待を示した。
また、ハーシミー副大統領は、民主主義や政治プロセスを推進しようとする人々に役割を与えていくことが治安問題解決の一方策であるとの考えを示し、抵抗勢力も含め、民族、宗派にかかわらず、すべての集団が協力して復興を進めていく必要があると強調した。その上で、治安を回復するためにはとりわけ経済の改革が重要であるとの考えを示し、イラクの失業率が55%に上っており、特に若年層の失業が多いことが問題であると指摘。多くの若者が雇用の機会が得られず、仕方なく民兵になったりテロ集団に参画したりしているとした。このことから、さまざまな経済プロセスを実施し失業を解消することが、間接的に治安改善にも貢献するとの考えを示した。
一方、日本企業は、古くからの伝統と近代的な技術をうまく組み合わせることによって成功しており、イラクでもその強みを生かすことができるだろうと述べ、多くのビジネスチャンスがあるので、日本企業には、経済復興のために積極的にイラクに進出してほしいと呼び掛けた。また、イラク復興支援法の延長が議論されていることに触れ、日本には引き続き中東諸国、とりわけイラクで主導的な役割を果たしてほしいと述べるとともに、イラクの治安情勢は広く湾岸諸国や中東全体に影響を及ぼし、日本の安全保障にもかかわる重要な問題であるとして、イラクとの関係構築の重要性を強調した。

その後行われた意見交換では、日本側から、「かつてイラクで建設した施設のメンテナンスや再建での協力が可能だ、技術者などが現地に入って作業を行う必要があり、治安の回復と現地の受け皿づくりが課題」と指摘した。
これに対しハーシミー副大統領は、「イラクの治安情勢は地域によって異なっており、南部は比較的安定している。まずは、イラクの人に調査させ、ニーズを把握することから始めてはどうか」と発言した。

【国際第二本部中南米・中東・アフリカ担当】
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