日本経団連タイムス No.2857 (2007年4月26日)

提言「京都議定書後の地球温暖化問題に関する国際枠組構築に向けて」を公表

−実効ある構築へ重視点指摘


日本経団連は17日、「京都議定書後の地球温暖化問題に関する国際枠組構築に向けて」と題する提言を取りまとめ、政府・与党首脳に建議するとともに公表した。
昨年11月の気候変動枠組条約締約国会議(COP12)を受け、京都議定書の第1約束期間後(2013年以降)の国際枠組のあり方に関する議論が高まりつつある。また6月に開催されるG8(主要国首脳会議)でも、温暖化問題が議論されることになっている。そこで、同提言は、実効ある枠組の構築に当たり重視すべき点を指摘している。

1.日本としての積極的な貢献の推進

今回の提言では、まず日本として、温暖化問題への取り組みに引き続き積極的に貢献していくべきことを確認している。
まず、来年から始まる京都議定書の現行約束期間の目標達成に向けて、行政、国民、企業等が具体的実践に努めるとともに、実効ある国際枠組のあり方に関する積極的な提言の必要性を指摘した上で、産業界としても、CO2排出削減のための環境自主行動計画の達成をはじめ、自主的な取り組みを強化していくとの決意を改めて表明している。併せて政府には、規制的手段ではなく、企業が自主性を発揮し、イノベーションを推進し得る環境整備を求めている。
また、産官学連携の下、環境配慮型商品・サービスの普及ならびに技術革新を推進するとともに、途上国支援のため、産業界として、世界最高水準の環境・省エネ技術を基に、製造プロセスの改善、製品等に関する協力を積極的に行うことを表明している。ODAについても、実情に即した柔軟な活用が可能となるよう改善・拡充を求めている。
さらに、産官学の英知を結集し、温暖化対策に関する実現可能な長期シナリオを策定し、あるべき社会システムや技術開発の方向性を示す必要性について指摘、産業界としても積極的に協力していくとしている。

2.次期枠組において実現すべき課題

その上で、ポスト京都議定書の枠組においては、すべての主要排出国が能力に応じて実効ある地球温暖化対策に取り組む国際枠組の構築が不可欠との認識の下、すべての主要排出国が参加しやすく、環境と経済が両立し得る仕組みの必要性を訴えている。その実現に向けて、日本として、次の5点の実現に向けて粘り強く交渉すべきとしている。

(1)衡平な枠組の実現

将来の技術革新の可能性を重視するとともに、エネルギー原単位など、過去の対策・努力の成果に十分配慮した枠組とすべきである。

(2)エネルギー政策と環境政策の一体的取り組み

多くの主要排出国が強い関心を持っているエネルギー利用効率の向上、エネルギーの安定確保を重視した対策を推進する必要がある。

(3)各国の実情に応じた多様性の確保

経済・産業構造、エネルギー事情等が多岐にわたる中、各国が最も効果ある対策を推進できるよう、多様な地球温暖化対策等を可能とすべきである。

(4)技術別、セクター別アプローチの推進

地球規模でCO2排出の抑制・削減のかぎとなるのは技術であり、継続的な技術の普及と革新的な技術開発の推進に向けて、産官学の連携、国際協力の充実・強化が必要である。
アジア太平洋パートナーシップ(APP)のような、セクター別アプローチは、産業界の知見の共有と普及を効率的に推進する実効ある仕組みである。
実効ある対策の具体的実践のためには、ボトムアップ型の対策を着実に推進することが重要であり、国連気候変動枠組条約の下でのプロセスと整合性ある取り組みが可能である。

(5)途上国支援の強化

効果が確認された既存環境・省エネ技術の活用や人材育成、制度整備等、途上国における温暖化対策を支援していく必要がある。途上国政府等との協力により、具体的プロジェクトの積極的な推進を図るべきである。

【産業第三本部環境担当】
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