日本経団連タイムス No.2858 (2007年5月10日)

G8ビジネス・サミット開く

−知的財産権保護など議論/メルケル独首相に共同声明手交


4月25日、ベルリンにおいてドイツ産業連盟(BDI)の主催でG8ビジネス・サミットが行われ、日本経団連からは、御手洗冨士夫会長、米倉弘昌副会長が出席した。今回のサミットは、ドイツのハイリゲンダムで開催されるG8首脳会議を6月に控えて開催されたものであり、このような形で経済団体トップが一堂に会するのは初めてである。当日は知的財産権の保護、地球温暖化への対応等について議論するとともに、WTOドーハ・ラウンドの推進、アフリカの開発等を含めて経済界の考え方を共同声明に取りまとめ、代表してトゥーマンBDI会長より、G8首脳会議議長国ドイツのメルケル首相に手交された。なお、日本経団連として、来年の然るべき時機に東京で、次回ビジネス・サミットを主催することを表明、各国の参加を要請した。議論の概要は次のとおり。

■成長と市場開放―投資の自由化

イタリア産業連盟のモンテゼモロ会長が、市場の開放、投資の自由化、競争の促進によってこそ成長が可能であると強調し、企業活動にとって好ましい環境整備の必要性を指摘した。米国国際ビジネス評議会のパレット会長は、投資に対するインフォーマルな障壁を含めて各国の規制の透明性の現状を調査すべきとした。また、ロシア産業家企業家連盟のショーヒン会長は、戦略的な産業の保護の必要性を認めつつ、外資参入に関する透明性の高いルール、手続きの明確化の重要性を指摘し、ロシアとしてもそれらに努める所存であるとした。

■成長とイノベーション―知的財産権の保護

御手洗会長から、持続的成長を遂げるためには、イノベーションの促進と知的財産権の保護がいかに重要かを強調するとともに、模倣品・海賊版対策のための法的枠組みの整備やそれらの撲滅をキャンペーンするための世界週間の設定を提案した。さらに、世界特許の実現や先願主義への統一の必要性などを主張した。カナダ商工会議所のマルクー前会頭は、より良い制度に向けて迅速な対応が必要と強調するとともに、途上国の能力向上には、教育のみならず、医療システム等を提供するための財源が必要であるとした。また、フランス経団連のパリゾ会長は、国際的なレベルでの対策の必要性を指摘する一方、行き過ぎた保護はイノベーションを妨げるとして知的財産権保護に関する取り組みは大胆かつ慎重であるべきとした。

■成長と環境保護―環境効率改善技術の推進

米倉副会長から、日本経団連の環境自主行動計画など日本の経済界による自主的かつ積極的な取り組み等について紹介した上で、「日本のエネルギー効率は世界で最高水準にあること」「CO2排出量の実質的な削減につながる取り組みが重要であること」を強調した。ポスト京都議定書の枠組みについては、米国、中国、インド等を含むすべての主要排出国が排出抑制に取り組むような枠組みが不可欠であると主張した。英国産業連盟のブロートン会長は、国際競争力を損なわずに排出量を減らす方法として、特定の産業に偏ることなく経済社会のあらゆる分野で削減努力を行うこと、経済界主導のイノベーションや社会の関心を喚起するような適切な政策枠組みを政府が打ち出すこと等が重要であるとした。一方、ビジネス・ヨーロッパのセリエール会長は、欧州企業の統一的な見解を打ち出すのは難しいとしつつ、企業として責任を持って解決策を見いだすことが重要と述べた。

「成長と責任」というテーマの下、G8首脳会議では、「経済成長の促進」と「公正なグローバル化」という2つの課題への対応を議論するとしたメルケル首相の講演で第1回ビジネス・サミットは幕を閉じた。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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