日本経団連タイムス No.2858 (2007年5月10日)

ウクライナ、カザフスタンにミッションを派遣

−日本NIS経済委員会 交流拡大の契機に


日本経団連の日本NIS経済委員会(安西邦夫委員長)は、4月15日から22日にかけて、旧ソ連諸国の中でも成長著しいウクライナとカザフスタンに、安西委員長を団長とする総勢42名のミッションを派遣した。
旧ソ連諸国である新独立国家(NIS=New Independent States)は、独立後15年を経た現在、技術力や豊富な天然資源を背景として、それぞれ特長ある発展を遂げている。しかしながら日本との経済関係はさほど進展していないことから、今後の交流拡大の契機とすることを目的として、このたびNISの中核をなす両国をミッションとして訪問し、政府・経済界関係者と意見交換を行った。

1.ウクライナ

ウクライナは2004年末のオレンジ革命によりユーシチェンコ大統領が誕生して以降も、EUに加盟してヨーロッパの一員となるのか、旧ソ連時代以来のロシアとの緊密な関係を維持するのかという将来の方向性をめぐり、緊迫した政治情勢が続いている。訪問団が首都キエフを訪問した際も、親欧米派の大統領、親ロシア派のヤヌコーヴィチ首相、それぞれの支持者多数によるデモ行進が行われていた。
ウクライナは人口4700万人を擁するNISの大国として、EUおよびロシア向け輸出拠点として注目される一方、不安定な政局は、ウクライナでビジネスを行おうとする企業にとって懸念材料となっている。この点についてユーシチェンコ大統領は、「現在、内政が混乱しているが、解決は近い。近い将来、この政治的危機を乗り越えることができると信じている」と述べ、訪問団に大きな安心感を与えた。
また大統領は、今後数カ月のうちにWTO加盟を実現させることへの決意や、伝統的に強い航空宇宙産業や重工業などの基盤を最大限に活用してイノベーション型産業を振興することへの強い意志を表明した。

2.カザフスタン

カザフスタンは石油・天然ガスのほか、ウランをはじめ多様な資源に恵まれており、2000年以降、毎年10%近い高成長を続けている。1人当たりGDPは既に5000ドルを超えており、中央アジアの近隣諸国の水準を大きく引き離している。
こうした中、ムシン副首相兼経済・予算計画大臣は、エネルギーを今後も大幅に増産することを計画していると述べたが、一方で過度の資源依存に対する危機感も抱いており、エネルギー輸出で資金が潤沢なうちに、産業構造の多角化を強力に推進するとの方針を示した。
エネルギー分野においては、欧米ならびに中国企業の進出が相次いでおり、カザフスタン政府はさらなる経済発展に自信を深めているが、同副首相は、経済の多様化のためにも、外国からの投資を積極的に活用したいとの考えを表明した。また、BRICsのうちロシアと中国に接し、インドにも近いという地理的な利点を強調し、日本企業に対し、高品質の鋼管、省エネ技術、建機製造などの分野における協力に期待を示した。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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