日本経団連タイムス No.2859 (2007年5月17日)

安倍首相の中東歴訪に合わせてミッション派遣

−重層的な関係の構築へ/中東五ヵ国首脳らと意見を交換


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は、わが国と中東諸国との関係の戦略的な重要性にかんがみ、安倍晋三総理の中東歴訪に同行する形で、多様な業種72社・団体から構成される約180名のミッションを、4月28日から5月3日にかけて、中東五ヵ国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦=UAE、クウェート、カタール、エジプト)に派遣した。これは、昨年11月のベトナム経済ミッションに引き続き、日本経団連が総理の外交日程に合わせて派遣したミッションであり、各国政府はじめ関係者からきわめて高い評価を得た。

■未来志向の重層的かつ互恵的な関係の構築に向けた各国との対話

同ミッションは訪問先各国から非常に温かい歓迎を受け、改めて日本への期待の強さが感じられた。訪問国からは、石油などのエネルギーに加え、投資促進、人材育成、ICT、インフラ整備、産業の高度化等の分野において協力の要請があった。また、各国首脳、政府高官や経済界との意見交換を通じて、中東諸国との間で未来志向の重層的かつ互恵的な関係を構築したいという、日本側の熱意を先方に伝えた。特に、拡大首脳会談や経済セミナーなどでは、昨年9月より交渉が開始され、物品貿易等をめぐって現在協議が進められている日GCC(湾岸協力会議)・FTA(自由貿易協定)を可能な限り早期に締結するよう、強く働き掛けた。
例えばサウジアラビアでは、安倍総理が出席したスルタン皇太子主催午餐会において、日GCC・FTA交渉や日サウジ投資協定交渉などについて議論するとともに、エネルギー分野での関係強化の方途について意見交換を行った。スルタン皇太子からは、「日本からの大規模な経済ミッションを心から歓迎する」「日本からのさらなる投資に期待する」などの発言があった。また、UAEとのビジネスフォーラムでは、グローバルな視点に立った両国の経済関係の強化と双方の投資・ビジネスチャンスや資源・エネルギー分野での協力可能性について、忌憚のない意見交換を行った。さらにクウェートでは、ナーセル首相と安倍総理との首脳会談に御手洗会長ほかミッション主要団員が加わり、資源・エネルギー分野での連携の強化とともに、産業の多角化・高度化における協力の可能性について意見交換を行った。また、御手洗会長は日GCC・FTAと日・クウェート租税条約の早期締結を要望した。
同ミッションの最大の成果は、日本と中東諸国との将来の互恵的なパートナーシップの構築を見据え、資源・エネルギー分野の一層の連携と併せて、産業の多角化、高度化への協力の可能性について、各国の首脳、経済人等と対話を深めたことである。石油や天然ガスのみならず、さまざまな産業における協力が進展すれば、そのことがエネルギーのさらなる安定供給の確保をもたらす好循環につながる。

■日本・中東新時代における官民連携の意義

日本経団連にミッション派遣を要請した安倍総理は、「御手洗会長を団長とする180名もの大規模なハイレベル経済ミッションが実現したことは、飛躍的な発展を遂げる中東諸国でのビジネスチャンスに対する期待の大きさを示すものである。日本企業の経験と知恵を中東諸国に伝えるまたとない機会である今回のミッションが、中東経済のさらなる発展や日本と中東との経済関係の多様化と深化に向けた起爆剤となることを強く期待している」と述べ、同ミッションの意義を改めて強調した。
グローバリゼーションが進展する中で、政府と民間経済界が連携し、諸外国との重層的な関係を構築することはますます重要になってきている。日本経団連としては、今後とも、新しい時代を迎えつつある日本と中東諸国との経済関係をさらに発展させるために、資源・エネルギーの安定供給の確保と産業の幅を広げた協力に官民一体となって取り組んでいく考えだ。

【国際第二本部経済連携担当】
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