日本経団連タイムス No.2859 (2007年5月17日)

提言「規制改革の意義と今後の重点分野・課題を公表」

−「官業の民間開放」など4視点から10分野・課題


日本経団連は15日、「規制改革の意義と今後の重点分野・課題」と題する提言を公表した。同提言は規制改革の今日的な意義を改めて示すとともに、今後取り組むべき重点分野・課題を新たな視点から掲げたもの。政府では、今年1月に発足した「規制改革会議」が今月下旬に「第1次答申」を取りまとめる予定であり、また6月には「骨太方針2007」が策定される予定である。提言は、これらに日本経団連の意見を反映させることをねらったものである。

提言の概要

1.深化する規制改革とその意義

規制改革は、これまで着実にわが国の経済社会の変革を促してきた。規制改革の意義は時代とともに変化するが、提言では、少子化・高齢化が進行してグローバル競争が激化する中で、規制改革の今日的な意義は、(1)国民一人ひとりの生活を豊かにすること(2)地域の自立性・自主性を高めること(3)わが国の国際競争力を高めるとともに、国際的なイコールフッティングを実現すること(4)企業の優れた取り組みを評価して奨励すること――であるとしている。
また、規制改革が格差の拡大など負の効果をもたらしたとの批判に対しては、規制改革それ自体が格差を拡大させることはなく、規制改革によって競争が促進されれば成長が高まり、資源の最適配分が行われることで格差の固定化を回避することができるとしており、セーフティネットを整備して再挑戦の機会を確保することにより、競争に参加する活力を引き出すことが重要だとしている。

2.今後の規制改革をリードする10の重点分野・課題

提言では、韓国、カナダ、エストニア等の海外の先進事例も参考に、めざすべき世界最先端の電子行政ビジョンを示している。
例えば、韓国の電子行政は、明確な目標設定と、透明性の高い実施に特長がある。業務効率化のために推し進めている「行政情報共有化」施策では、2005年までに共同利用可能な24種類の行政情報の添付書類を廃止し、年間4000万件の書類削減効果と、2484億ウォンの社会経済的な費用削減を達成した。
また、民願処理オンライン公開システムを構築し、行政手続きの進捗状況をほぼリアルタイムでインターネット上に公開することで、公正な業務処理過程の制度化と、不透明な裁量行政の排除をめざしている。
わが国が世界最先端の電子行政をめざすのであれば、電子行政の推進においても、(1)徹底的な業務改革による、世界一の効率性(2)利用者の視点に立った世界一の利便性(3)利用者が自己に関する行政情報を自由に利活用できる世界一の透明性――といった高い目標を掲げ、明確なビジョンを示すべきである。
企業が実施している従業員等に関する行政手続きについては、省庁の縦割りを廃し、企業がデータベースで管理している情報を、所定のデータフォーマットに沿った形で一括送付することで、手続きを完了できる行政システムを構築すべきである。このような電子行政が実現すれば、年間1兆円を超えるとも試算されている、企業の行政事務コストの大幅削減が期待できる。

【産業第一本部行革担当】
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