日本経団連タイムス No.2860 (2007年5月24日)

ジェフリー・オニヤマ世界知的所有権機関事務局次長と懇談

−WIPOの活動状況など聴取


日本経団連は14日、東京・大手町の経団連会館において、ジェフリー・オニヤマ世界知的所有権機関(WIPO)事務局次長との懇談会を開催した。

懇談の冒頭、あいさつに立った野間口有知的財産委員長は、「日本経団連では、今年1月に新ビジョン『希望の国、日本』を公表した。今後もわが国が持続的に成長力を維持していくためには、イノベーションの創出が不可欠であり、その実現のためには知的財産政策が重要と考えている。世界特許の問題や模倣品・海賊版の問題など、知的財産をめぐる諸問題は、わが国産業界としても最重要課題の1つととらえており、懇談を通じて共通認識を深めていきたい」と述べた。

続いて、オニヤマ事務局次長から最近のWIPOの活動状況について説明があった。オニヤマ事務局次長は「WIPOの最大の使命は、知的財産権の尊重と保護にあり、その実現に向けて加盟国間の議論の促進や途上国への技術的支援に取り組んでいる。マーケットのグローバル化に伴って“知識”と“情報”が経済的財産として扱われるようになり、今後、知的財産の尊重と保護がより一層重要になってくる」と所見を述べた。その上で、「知的財産権の保護は一義的には国の義務である。しかし、現在、特許、商標、意匠など、国ごとに異なったシステムが運用されており、そのために登録手続きなどが煩雑になるとともに、コストもかさんでいる。WIPOでは、例えば、特許管理システムなど、比較的共通化しやすいところから国際間の調和を図っていきたい」と述べた。また、模倣品・海賊版対策については、「加盟国の政府、司法、税関などの執行機関と連携し、知的財産権に対する意識向上に取り組んでいきたい」との考えを示した。

続いて、参加者との意見交換が行われ、日本経団連側から「特許システムに関する問題として、米国の“先発明主義”の問題がある。世界の趨勢は“先願主義”であり、フェアな競争を行う上での障害となっている。WIPOとしても問題解決に向けて取り組みを加速してもらいたい」「東アジア、南米等において模倣品・海賊版の問題が深刻化している。抜本的な解決に向けた対応をお願いしたい」「特許審査について、審査件数が増加していることによってさまざまな弊害が生じている。中長期的な目標として、世界特許の実現に取り組んでもらいたい」といった意見が出された。

これに対して、まず、オニヤマ事務局次長から、「米国の“先発明主義”の問題については、現在、米国議会に“先願主義”への移行を柱とする特許改革法案が提出されており、今後の動きに期待したい」との考えが示され、また、模倣品・海賊版の問題については、「加盟国と協力して積極的に対策に取り組んでいる。特に中国においては、政府による摘発とともに、教育・啓発活動などさまざまな対策がとられている。最近では中国自体が知的財産権を生み出すようになってきており、近い将来、状況は変わってくるであろう」との見解を示した。

さらに、アラン・ローチWIPO東京事務所長からは、「現在の各国の特許システムは非常に煩雑であり、コストがかかる。日米欧の3極特許庁間で調和に向けた検討が進められているが、解決すべき課題も少なくない。WIPOとしても、各国の特許システムの重複を解消すべく、解決しやすい部分から取り組んでいきたい」との見解が示された。

最後に、幸田シャーミン国連広報センター長からあいさつがあり、「国連とビジネス界との連携には非常に大きな意味がある。より良い世界にしていくという国連の使命を実現させるため、今後とも協力をお願いしたい」と述べた。

【産業第二本部開発担当】
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