日本経団連タイムス No.2860 (2007年5月24日)

国際協力委員会を開催

−新JICA発足に向けて


来年10月、国際協力機構(JICA)と国際協力銀行(JBIC)の円借款担当部門が統合し、新JICAが発足する。そこで、日本経団連は4月25日、東京・大手町の経団連会館で国際協力委員会を開催し、JICAの黒木雅文理事とJBICの武田薫理事から新JICA統合に向けての進捗状況や新組織のあり方などについて説明を聴いた。

黒木・武田両理事は、「新JICAの目玉は技術協力、円借款、無償資金協力の3スキームを一つの組織で一体的に行えるようになることである。経済界の要望の強い事業の迅速化については、本部の体制を、地域を軸とした組織編制としていくこととし、案件形成を効率的に行うことによって達成していきたい。また、民間セクターとの連携を強化し、今後も途上国の経済成長を重視した協力を実施していきたい」と述べた。

黒木理事からは、新JICAのメリットについて、(1)相手国の開発課題に合った協力を3スキームを駆使して実施できること(2)円借款に結びつけることなども念頭に置きながら、案件形成のための調査を実施できること(3)施設整備などハードの面だけではなく、人材育成などソフトの面も合わせて協力できること(4)パイロットプロジェクトを無償協力で行い、成功した場合に円借款でそれを拡大するなど、柔軟に対応できること――を挙げた。また、新JICAではこれまで手がけてきた案件に加えて、「投資環境整備」「環境」「省エネルギー」「CSRに関連する活動」などを、民間企業と連携し実施していきたいと発言があった。さらに、インドネシアやベトナムでの官民間協力の具体例を挙げ、こうした成功例を他地域にも拡大していきたいとの意気込みを語った。

また、武田理事からは、貧困削減やアフリカ開発などいわゆる国際協力に対する世界的な注目が高まっており、わが国の知見を積極的に発信しイニシアティブをとっていくことが重要であるとの発言があった。さらに、EUが2015年までに対GNI比で0.7%のODA供与をすると表明したのに対して、わが国は5年間で100億ドル増額するという公約を着実に実行するなど、限られた財政制約の中で最大限の協力をしなくてはいけないと述べた。その上で、新JICAの具体的課題として、(1)ODAの事業量の拡大(2)案件形成期間の短縮・開発調査の打率の向上(3)人間の安全保障から経済成長まで幅広い業務の推進――を挙げた。また、「日本政策金融公庫」に統合される、JBICの国際金融部門と新JICAとの連携を密にしていきたいと述べた。

続いて行われた懇談では、国際協力事業を推進するに当たっては、現地の日本人商工会など民間の意見をもっと取り込んでほしいという企業側の意見に対して、両理事とも民間企業との公正な意見交換は有効であり、前向きに検討していきたいと述べた。また、JBICの円借款部門と国際金融部門が分離され、これまでのように密に連携がなされないのではないかという疑念に対しては、各々の案件の事例に則して「日本政策金融公庫」の国際部門と相談しながら連携を強化していきたいと回答があった。

【国際第二本部国際協力担当】
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