日本経団連タイムス No.2862 (2007年6月7日)

海洋開発推進委員会を開催

−成立した海洋基本法について説明を聴取


日本経団連は5月25日、東京・大手町の経団連会館で、海洋開発推進委員会(伊藤源嗣委員長)を開催し、自民党海洋政策特別委員長を務める石破茂衆議院議員から、4月に成立した海洋基本法に関する説明を聴取した。

石破議員説明

冒頭、石破議員から、基本法制定プロセスの特徴について説明があった。海洋基本法は議員立法であるが、多くの議員立法と異なり、国会議員、産業界、学識経験者、政府関係者が検討の初期段階から参加した。さらに、国会議員については、与党だけでなく、一部の野党も参加していたため、国会提出からわずか1カ月足らずで成立した。

続いて、法律の内容についての説明があった。主な内容は、基本理念、海洋基本計画の策定、日本船舶の確保および日本人船員育成の重要性、総合海洋政策本部の設置、の4項目である。具体的な説明は次のとおり。

1.基本理念

これまで、海に係る問題が発生すると、関係する省庁による調整に手間取り、その間に手遅れになるということが多かった。また、国際的な海洋秩序を決める場においても、わが国の統一見解を主張することができず、大いに国益を損なっていた。そこで、今後は内閣が一括して海洋政策を取り扱うこととした。

2.海洋基本計画の策定

海洋基本計画には、(1)海洋に関する施策についての基本的な方針(2)海洋に関する施策に関して政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策(3)海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項――の3つを明記し、5年ごとの見直しを実施することとした。

3.日本船舶の確保および日本人船員の育成

海洋国家の中で、日本は自国籍船舶および船員数が極端に少ない。これらを増やすため、税制など何らかの措置を講ずる必要がある。

4.総合海洋政策本部の設置

海洋に関する施策を強力に推進するため、内閣総理大臣を本部長とする総合海洋政策本部を内閣に設置し、内閣官房長官および海洋政策担当大臣を副本部長とする。さらに、法案附帯決議において、有識者によって構成する会議の設置を求めており、これによって、産業界の意見も反映される。

懇談

続いて、委員会出席者と石破議員との間で懇談が行われ、日本経団連側から、有識者会議の設置に関連して、附帯決議の拘束力および実行の担保に関する質問が出された。それに対し、石破議員からは、附帯決議は政府を拘束しないが、決議の内容を国会等の場で繰り返し発言することで、実行を促していきたいとの回答があった。

また、附帯決議の第5に明記されている、「領土の保全に遺漏なきを期す」の具体的な内容に関する質問に対しては、石破議員から、国際的な議論への積極的な関与や国内法の整備を行うとともに、起こり得る事態を想定し、それに対する対処を検討することであるとの回答があった。

今後の対応について

海洋基本法の成立により、これまで日本経団連が求めていた開発と利用に関する総合的・一元的な推進体制の整備に向け、今後、大きな前進があるものと期待される。日本経団連においては、海洋基本計画への意見表明等を通じ、今後とも海洋開発の推進に努めていく考えである。

【産業第二本部技術担当】
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