日本経団連タイムス No.2866 (2007年7月5日)

税制委員会企画部会を開催

−税制抜本改革の課題で意見を交換


日本経団連は6月18日、東京・大手町の経団連会館で税制委員会企画部会(田中稔三部会長)を開催し、東京大学大学院法学政治学研究科教授・中里実氏から税制抜本改革における諸課題について説明を受けるとともに意見交換を行った。
今年秋以降に予定される税制抜本改革の本格的な議論に向けて、日本経団連では、税制委員会企画部会が中心となって検討を進めている。中里教授は、現在、政府税制調査会の調査分析部会の主査を務めている。中里教授からの説明概要は次のとおり。

1.『デフレ下の法人課税改革』から

2003年1月の著書『デフレ下の法人課税改革』(有斐閣)では、“固定資産の減価償却は100%償却まで認めるべき”など、当時のデフレ下の法人税改革に関して、7つの論点を示した。03〜07年までの4年間で、取り上げた7つの論点のほとんどの改革が進みつつある。税制改革要望を行う団体も、責任をもって、実現しそうな事と困難な事を見極めて、税制改革提言をしなければならない。また、提言は、国民全体の利益に資するものでなければならない。

2.税制抜本改革の基本的な考え方

昨今の税制改革議論をめぐって、2つの立場がある。1つは、「財政再建路線」である。依然として財政赤字が800兆円を超える上に財政投融資があるので、財政再建は非常に重要な目標である。そのために消費税について再検討を行い、法人税や所得税は微調整に努めるという考えである。

もう1つは、「経済成長路線」である。現内閣も日本経団連もこの考え方だと思う。これも重要な目的である。経済の成長を止めてしまうわけにはいかない。法人税負担について再検討し、競争力を高めようというものである。

財政再建路線と経済成長路線の2つの立場の差異は、現在、政府税制調査会で議論されている、租税原則の“公平・簡素・中立”を、“公正・簡素・成長”とすべきか否かという論争にも現れている。しかし、財政再建も経済成長もどちらも必要なものなので、程度問題と言える。どちらの考え方も、消費税を中心とした税制の抜本改革が必要ということで、基本的な立場にそれほど差があるわけではない。先般、政府税制調査会で海外視察に行ってきたが、ドイツでは財政再建路線と経済成長路線が非常に見事に結びついていると感じた。大胆な税制改革の後のドイツはますます景気がいいし、まだ続くだろう。

財政再建と経済成長は、片方のみが実現するというものではなく、日本でも二つの路線を融合させて、うまくバランスを取って組み合わせていくことができると思う。

3.税制抜本改革の課題

どの国でも税制改革に対しては感情的な議論が出てくる。同じ額でも減税はささやかに、増税は大増税に感じるものである。この意識のギャップ、世論への配慮が必要である。また、諸外国との単純比較だけでは、改正の論拠としては不十分である。さらに、市場に目を転じた場合、外国人投資家の視点も重要である。プライオリティーをつけ、経済的にも納得性のある提言が必要である。

【経済第二本部税制・会計担当】
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