日本経団連タイムス No.2867 (2007年7月12日)

日本経団連訪欧ミッション派遣

−政府指導者らと意見交換


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は、6月26日から7月4日にかけて、米倉弘昌副会長・ヨーロッパ地域委員長・経済連携推進委員長を団長とする総勢16名のミッションを、デンマーク、フィンランド、イタリアに派遣した。
EUはこれまでの拡大により米国を上回る単一市場となり、政治面でも一層の深化を進めつつある。このような中、欧州との間に高度に成熟した経済関係を構築することは、わが国の持続的な発展にとって重要との認識の下、各国の政府・経済界の指導者との間で意見交換を行った。

■訪問各国との意見交換

デンマークは、世界経済フォーラムの世界競争力報告において第4位に位置付けられており、少子・高齢化や高い労働コストを踏まえ、教育や研究開発を強化することにより、真に国際競争力のある知識社会の実現をめざしている。
懇談したベンセン副首相兼経済産業大臣は、自国を知識集約型産業に特化し、諸外国との分業を推進する国際化戦略を推進していると説明した。
イノベーション促進策については、ペダーセン科学・技術・開発省次官から、バイオ、エネルギー・環境、ICT、北極研究などの重点分野の研究開発を強化し、大学改革も断行しているとの説明があった。また、2009年にコペンハーゲンで開催されるCOP15(気候変動締約国会議)における、ポスト京都議定書の枠組み合意に意欲が示された。

フィンランドも、世界競争力報告で第2位に位置付けられており、従来の2大産業(製紙・パルプおよび金属)に加え、近年はノキア社をはじめとするハイテク産業の育成に成功している。
こうした点に関し、ヴァユリュネン外国貿易・開発大臣は、少子・高齢化が進行しているものの、教育の重視や産学官連携の推進を通じた生産性向上により、高コスト社会構造ながら高付加価値企業が競争力を維持できていると説明し、ICT、環境、バイオなどの分野における日本との協力拡大を要望した。
また、企業の国際化が進展しており、国として自由貿易の推進を標榜していることのほか、ロシア市場参入の足掛かりとしてフィンランドを位置付けることで、対ロシア事業リスクの軽減が可能であることについて説明した。

イタリアは、伝統的にファッションや食品加工が産業の中心であったが、バイオやナノなど先端科学技術の強化による競争力向上をめざしている。こうした背景から、イタリア産業連盟では、エネルギー・環境や知的財産権問題は日本との共通の関心事項であるとするとともに、再生可能エネルギーの開発利用に当たり、日本との協力を拡大したいと要望した。
このほか、スキヨッパ経済財政大臣は、消費者保護、競争促進、経済活動の活性化を目的とした規制改革を国内で推進していることを説明した。

■日EU経済連携協定についての立場

各国での会合では、日本側から、今年6月に公表した日本経団連の提言「日EU経済連携協定に関する共同研究の開始を求める」の趣旨を説明し、理解を求めた。
これに対し、デンマークでは、既に欧州委員会に日本とのEPA交渉開始を勧告しており、提言の趣旨にも賛同する旨の発言があった。フィンランドは、ドーハ・ラウンドの推移次第では日本とのEPA交渉が早まる可能性があるとの認識を示した。さらにイタリアでも、官民ともに検討に前向きな姿勢が示され、提言の実現に向け、加盟国の理解を深める重要な成果が得られた。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
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