日本経団連タイムス No.2868 (2007年7月19日)

「日本経団連フォーラム21」7月講座開催

−「競争優位を確立するための戦略」や「最新M&A事情」などの講演を聴取


日本経団連事業サービスは6日、都内で「日本経団連フォーラム21」の7月講座を開催した。

午前中の「ビジネスにおける服装術」では、ブルックスブラザーズジャパンの永田博人取締役から、自己を演出しイメージアップするためにどのような服装をすべきか、またどのような色使いがふさわしいかなど、実際のコーディネートを参考に具体的なアドバイスを受けた。特に、ネクタイにディンプルをつくることが最も簡単で有効なイメージアップ策であることや、クールビズへの対応にポケットチーフを用いるなど、エグゼクティブとしての効果的な自己演出法の提案がなされた。

午後の第1講では、フォーラム21のアドバイザーを務める一橋大学大学院国際企業戦略研究科長の竹内弘高教授が、「競争優位を確立するための戦略」をテーマに講演。この中で竹内教授は、競争戦略のゴールを「業界平均を上回る業績の実現」と指摘、そのためには「オペレーションの効率化」と「戦略的ポジショニング」を図る必要があると述べた。

さらに、「日本企業は、TQMやカイゼン活動、ZD運動などのオペレーションの効率化ではグローバルスタンダードを築いた。それによってグローバルな同質化を惹起することになったが、本来のゴールである高い業績を達成することはできなかった。これからは、他者と異なることを行うか、もしくは“やらないこと”を選択し、戦略的ポジショニングを得ることがより重要となってくる。半導体メーカーの例をひもとくと、日本の企業が多くのセグメントにかかわっている状況にあるのに対し、欧米企業はフォーカル・ポイントを絞る戦略で競争優位を生み出している。今後の競争においてはベストを追い求めるものではなく、いかにユニークなものを生み出すかによって企業の位置や優位性が決まっていく。日本企業は今こそその点に着目し、戦略性を高めていくことが求められている」と結んだ。

午後の2講目は、GCA代表取締役で一橋大学大学院国際企業戦略研究科の佐山展生教授が「最新M&A事情」と題して講演を行った。

佐山氏はまず、M&Aを手掛けることになった経緯を語り、工場の三交代勤務を経験する中で、ものづくりの現場を、身をもって体験したことが今に活きていることを強調した上で、M&Aの最新事情について次のような考えを示した。

わが国でもM&Aは盛んになってきたが、企業にとっての価値は、それを見る者によって変わり、現行の株価だけで判断できるものではない。企業価値を形づくる有形、無形の財産は、時に応じてさまざまに変化し、経営者の力によっても大きく変わってくる。株式の上場、それ自体には企業にとって安心や信用力を生み出すメリットがあり、そこに上場を続けていく意味がある。しかし、株価に表れた時価総額は会社の価値そのものを表すものではなく、ひとつの計算結果にすぎない。そのため、時には上場を続ける意味のないこともあり得る。非上場化には株主や株価を気にせず新しいことをやれるという長所もあり、株式上場が企業のゴールとはならない。

敵対的買収はさまざまに分類されるが、これまでの図式(よき経営者の下に悪しき買収者が訪れる)とは異なり、今後は反経営者買収(悪しき経営者の下によき買収者が現れる)が発生することになろう。このようなこれまでと異なる動きは、社会に大きなインパクトを与える。日本企業による日本企業の買収は今後ますます増えるだろうが、基本合意書をつくる前に、「社長を誰にするか」「本社をどこに置くか」「社名は何にするか」「統合比率はどうするか」を最低限決めておく必要がある。そうしなければゆくゆく必ずもめごとに発展し、話はまとまらなくなってしまう。

日本においても、さらに企業買収は増えていくだろう。そのために企業は、利益を配当に回すようになってきた。しかし、企業の価値は経営者によって9割以上が決まる。“経営者の器”以上の会社はできないことを、肝に銘じておくべきだ。

【日本経団連事業サービス研修担当】
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