日本経団連タイムス No.2872 (2007年8月23日)

日中CSR対話フォーラム開催

−CBCC中国から講師招き


日本経団連の関連組織である海外事業活動関連協議会(CBCC、立石信雄会長)は7月20、21の両日、静岡県小山町の経団連ゲストハウスにおいて、「日中CSR対話フォーラム」を開催した。

CBCCでは、日本企業が「良き企業市民」として企業の社会的責任( Corporate Social Responsibility = CSR )を果たし、企業を取り巻くステークホルダーと良好な関係を構築するための諸活動を支援している。その一環として、近年では、多数の日系企業が操業する中国へのミッション派遣や中国のCSR推進団体とのシンポジウム共催などを通じて、中国におけるCSRの実態調査や中国のCSR推進団体との連携強化を進めている。

今回のフォーラムは、中国から、政府関連団体である中国企業公民委員会の劉衛華事務局長、商務部企業社会責任発展センターの殷格非主任、中国企業連合会と持続可能な発展のための世界経済人会議(WBCSD)が中国政府の支援の下、共同で設立した中国持続発展商工理事会(CBCSD)のテキ斉副事務局長、北京大学の何志毅教授、TCLブランド管理センターの梁啓春社長の5名を講師として招聘し、日本経団連・CBCCから22名の参加者を得て開催、中国におけるCSRの取り組みの現状や今後の課題などについて、幅広く意見交換を行った。

1日目の全体会議では、何教授から「中国におけるCSR―現状と課題」をテーマに、中国の社会主義市場経済に即したCSRへの取り組みの重要性や、昨年10月に多国籍企業と中国企業約20社が参加して発足した「中国企業社会責任同盟」の活動などについて説明があった。続く殷主任は、中国社会の発展段階とCSRとして求められる内容の変遷を、計画経済の時代と改革開放後の時代に分け、さらに改革開放以降を3つの段階に分けて説明した。また、企業が自らの事業活動とCSRを有機的に統合することでCSRを競争力に結び付ける「責任競争力」の考え方や、中国における取り組み事例について説明した。続く劉事務局長からは、「中国におけるCSR推進に向けた取り組み・課題」をテーマに中国優秀企業市民表彰制度、中国の企業市民モデル基地の認定や、CSR報告書作成に関する手引きの作成とCSR報告書のデータベース化などの企業公民委員会の活動が紹介された。また、テキ副事務局長からは、会員企業1社がサプライチェーンの上流・下流のビジネス・パートナー1社(理想的には顧客1社、サプライヤー1社、物流サービス企業1社)に対してCSRへの取り組みを指導・推進することで、サプライチェーンを通じて中国全体にCSRへの取り組みを広めていく『CSR「1+3」プロジェクト』などのCBCSDの活動が紹介された。

2日目の分科会では、「グローバルに評価されるCSR報告書を目指して」「国際的なCSR基準・規格への対応」「CSRの戦略的コミュニケーションとステークホルダーエンゲージメント」の3つの分科会に分かれ、中国人講師も交えて少人数によるグループ討議を行った。

同フォーラムを通じ、中国では政府が中心となって積極的にCSRを推進していること、他方、国際的なCSR基準・規格の内容を踏まえつつ、いかにして中国の社会主義市場経済の実態に即したCSRへの取り組みを進めていくかが課題となっており、各種のCSR推進機関においてCSRに関する理論研究や、ガイドライン、模範取り組み事例集の作成などが盛んに行われていることがわかった。また日系企業の中国におけるCSRへの取り組みが中国国内ではまだ十分に認知されていない問題に関しては、政府やマスコミなど、オピニオンリーダーを自社のCSRの取り組みにうまく関与させることや、日系企業内で中国人従業員が活躍できる環境や機会をさらに創出していくことが必要などといった指摘があった。

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