日本経団連タイムス No.2874 (2007年9月6日)

海洋開発推進委員会を開催

−内外の海洋政策状況など/説明を聴取し意見交換


日本経団連は8月29日、東京・大手町の経団連会館で海洋開発推進委員会(伊藤源嗣委員長)を開催した。同委員会では、7月に内閣に設置された総合海洋政策本部の大庭靖雄事務局長から、海洋の重要性や海洋政策に関する内外の状況等について説明を聴取するとともに、意見交換した。大庭事務局長との懇談終了後には、海洋基本計画へ向け、委員会としてどのように対応するか議論した。

■大庭事務局長説明(要旨)

1.わが国の海洋をめぐる状況

わが国の国土面積は約38万平方キロメートルと世界第60位であるが、領海・排他的経済水域の面積は約447万平方キロメートルで世界第6位である。また、離島の数は6847、海岸線延長は世界第6位の約3.5万キロメートルである。経済的な面でも、輸出入取扱貨物量の海上輸送依存度が99%以上、漁獲量が世界第5位の576万トンで、わが国はまさに海洋国家といえる。

2.海洋基本法について

海洋基本法は、食料、資源・エネルギーの確保や物資の輸送、地球環境の維持等において海洋の果たす役割が増大したことや、海洋環境の汚染、水産資源の減少、海岸浸食の進行、重大海難事故の発生、海賊事件の頻発、海洋権益の確保に影響を及ぼしかねない事案の発生等、さまざまな海の問題の顕在化により、海洋政策の新たな制度的枠組みの構築が必要になったという背景の下、議員立法で国会に提出され、4月27日に成立し、7月20日に施行された。
海洋基本法には、(1)海洋の開発及び利用と海洋環境の保全との調和(2)海洋の安全の確保(3)科学的知見の充実(4)海洋産業の健全な発展(5)海洋の総合的管理(6)国際的協調――の六つの基本理念の下、それを実施するための12の基本的施策が規定されている。また、内閣に総合海洋政策本部を設置し、海洋に関する施策についての基本的な方針や、海洋に関して政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策等を規定した海洋基本計画を策定することとなっている。

3.海洋行政の推進体制

海洋基本法の施行前は、「海洋開発関係省庁連絡会議」と「大陸棚調査・海洋資源等に関する関係省庁連絡会議」という二つの局長級会議で海洋行政を議論していたが、施行後は総合海洋政策本部が海洋に関する施策を総合的、計画的に推進する体制となった。本部長は内閣総理大臣で、副本部長は内閣官房長官と海洋政策担当大臣(国土交通大臣)、本部員は本部長および副本部長以外のすべての国務大臣となっており、内閣官房に事務局が置かれている。さらに、10名の有識者で構成される参与会議を設置し、その意見を本部の議論に反映するとともに、関係省庁の局長級の幹事会を設置して各省の調整を図ることとなった。

4.当面のスケジュール

第1回本部会合は7月31日に開催され、参与会議の設置について事務局から報告した後、幹事会の設置等を決定した。今後、2回程度本部会合を開催し、2008年1月に海洋基本計画を閣議決定する予定である。その間、参与会議を2回開催する予定である。

■懇談

日本経団連側から、参与会議の構成が学者に偏り、本部の議論に産業界の意見が反映されないのではないかとの懸念が示されたのに対し、大庭事務局長からは、10月中であれば事務局で意見を聴取する用意があるとの回答があった。
また、来年度予算と基本計画の関係については、本部から各省に対し、基本計画を意識して予算要求するよう指示を出したとの回答があった。

■今後の対応について

大庭事務局長の説明を踏まえ、同委員会の総合部会で集中的に議論し、10月中に日本経団連としての提言を取りまとめる予定である。

【産業第二本部海洋担当】
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