日本経団連タイムス No.2874 (2007年9月6日)

経済広報センター、「企業広報賞」表彰式開く

−1社・3氏が受賞/御手洗会長、企業広報の重要性を指摘


日本経団連の関連組織である経済広報センター(御手洗冨士夫会長)は3日、東京・大手町の経団連会館で、第23回「企業広報賞」の受賞企業・受賞者に対する表彰式を開催した。企業広報大賞は三井不動産(岩沙弘道・代表取締役社長)が受賞したほか、企業広報経営者賞はデンソー相談役・前取締役会長の岡部弘氏が受賞した。また企業広報功労・奨励賞には三菱UFJニコス広報部上席調査役プロデューサーの風間眞一氏、帝人帝人グループ常務理事広報・IR室長の吉川勝氏が選ばれた。

表彰式ではまず、主催者を代表して御手洗会長があいさつし、「企業を取り巻く環境は、大きく変わりつつある。消費者やメディアが企業を見る目は想像以上に厳しくなってきている。企業には、安心・安全をベースに、社会から信頼される経済活動を推進することはもちろん、適時に的確な情報を開示すること、そして相互理解を推進するコミュニケーションが求められている。経営者はその姿勢をステークホルダーに積極的に発信し、対話を心掛けなければならない。これをサポートするためにも、企業と社会の懸け橋である広報の役割はますます重要になってきている」と指摘した。

その上で、「このたび企業広報賞を受賞された企業、個人の方々は広報の重要性を認識し、社会との信頼あるコミュニケーションを積極的に推進してこられた。今後とも企業広報の模範としてますます活躍されることを願う」と述べた。

この後、表彰状・トロフィーの贈呈と、選考委員長を務めた一橋大学大学院商学研究科教授・伊丹敬之氏による講評が行われたのに続いて、受賞企業代表・受賞者があいさつし、喜びを語った。

各賞受賞者のあいさつの要旨(文責記者)は次のとおり。

各賞受賞者あいさつ(要旨)

<岩沙 弘道・三井不動産代表取締役社長>

この春グランドオープンした「東京ミッドタウン」や「日本橋再生計画」に代表されるさまざまな都市再生プロジェクトは、それ自身が多彩な情報発信力を持ち、また街づくりの営みそのものが生きたメディアであるという側面がある。今回の受賞は、当社のグループビジョンに謳われている「共生・共存」「多様な価値観の連携」の理念を体現する街づくりを通して、広報、広告宣伝、社内啓発が三位一体となって推進され、広くかつ深く、当社の経営理念を、顧客をはじめ各ステークホルダーに認識・理解してもらうという当社独自の取り組みを評価していただいたからだと思っている。

「日本橋再生計画」を例に取れば、日本橋はまさに都市としての東京の発祥の地である。その街を21世紀にふさわしい魅力あふれたものに再生するために、価値のあるものを残し、よみがえらせながら、クリエイティブに創造していくという街づくりのコンセプトが三井不動産グループの「共生・共存」「多様な価値観の連携」そのものではないかと思う。

私たちは、都市に豊かさと潤いをというグループステートメントを掲げており、当社グループは今後も、成熟化・グローバル化という社会経済の構造変化をしっかりととらえ、魅力あふれる街づくりを通じ社会の発展とお客様の豊かな暮らしの実現に向けて、一丸となって取り組んでいきたい。企業広報においても、今回の受賞を大きな励みとして、すべてのステークホルダーから信頼されるパートナーとして認識いただけるような活動をこれまで以上に積極的に推進していく。

<岡部 弘・デンソー相談役・前取締役会長>

この11年間、取り立てて新しいことではなく、愚直に自分の思いを続けてきたということを、社外の一般の皆様から評価していただいたということを何よりもうれしく思っている。

以前の広報は、商品の広告宣伝をするということが中心であった。しかし、私が社長に就任した当初、会社の知名度を調査してもらったところ、名前だけは知っているという人が多く、どういう会社か理解している人は非常に少なかった。こんなことではだめだと思い、三つの方針を立てた。第一には、企業のトップそのものが会社の広告塔になることである。第二はマスコミ各社が行う企業ランキングの評価ポイントを調べて、当社が至らないところ、高い評価が得られないところを改善していくことを全社で実行することである。第三は、学界や業界の研究発表の場、論文の募集、マスコミなどによる新技術、新製品の募集などに可能な限り出展して、評価を得るということである。ちょうど1990年代半ばの不況時代であり、会社の業績もよくなかった。あまり広告宣伝費をかけられないという事情があったわけだが、商品を宣伝してもなかなか理解を得られない。それならば、企業そのものを理解してもらうように努力する必要があるとの考えだった。

それと同時に、スポーツ、ボランティア、現場の小集団活動など、それぞれの場で、高い評価を得て、当社の名前を社会にアピールした社員を年1回、社長自ら表彰するということもやってきた。

企業の広報というのは一部門、一個人の問題ではなく、社員全体が、その持ち場、立場で実行していくものである。そう思って行動してきた。

<風間 眞一・三菱UFJニコス広報部上席調査役プロデューサー>

通算16年ほど広報業務に携わっている。今回の受賞は、信販・カード業界にとって初めてのことである。金融と消費のはざまにあって、消費の下支えという点で、ややもすると陰に隠れがちな産業に目を向けていただき、本当に感謝の念に耐えない。

今回の表彰は、決して私個人に対してだけ行われたものではない。苦しみも悲しみも共にした仲間や、今がんばっている後輩たち全員がいただいた賞だと認識している。またこれが、信販・カード業界で広報活動に従事している人たちの励みになってくれれば、本望である。

私は常々、広報の役割というのは、情報参謀として組織の情報をコントロールし、組織の内外に向けて情報の受発信を最大限効果的に演出することではないかと考えている。もちろんこれは、なかなか簡単なことではない。トップの理解や信頼が必要だし、社内関係者の協力が不可欠である。またメディアに対しても、企業の立場や責任について理解を願い、正しく報道してもらえるように信頼関係を構築することが大切だと思っている。メディアとどう向き合うかが、広報の醍醐味でもある。

これまで長く広報という業務にかかわらせてくれた会社に大変感謝している。また、ここまでやってこられたのは、メディアをはじめ、社内外の皆さんとのつながりがあったればこそと感謝している。皆さんからいただいた名刺の一枚一枚は私の宝物である。皆さんに培われた感性とさまざまな局面での経験を糧に、これからも企業広報の発展に少しでも役に立てればと思っている。

<吉川 勝・帝人帝人グループ常務理事広報・IR室長>

今回受賞した賞は個人賞ではあるが、皆さんから応援してもらい、帝人の広報活動全体が表彰されたものと思っている。

10年前、15年前と比べると、広報の仕事が変わり、広報の位置付けも変わった。帝人でも、私が広報に配属された十数年前は総務部広報室ということで、広報の業務は部の下の課のレベルであった。それを2代前の社長が、社長直轄の組織にし、前社長が社長に就任したときに、広報・IR活動は経営トップの仕事だということを明確にして、広報・IR活動を推進した。現在では、われわれの広報・IR活動は、帝人のコーポレートガバナンスの中にしっかりと組み込まれた存在になっている。

帝人の広報・IR室というのは、広報とIRと宣伝、株主総会の責任部署である。広報・IR室の一番の特徴は、広報とIRと宣伝とが三位一体となって、情報発信するということである。帝人に対する企業認知度、理解度はまだまだ低いものがある。数年前に消費者アンケート調査を行ったら、若い人は帝人がどんな会社か知らず、年輩の人は繊維会社というふうに思っていることがわかった。現在の帝人の中心は高機能素材事業とヘルスケア事業であるから、企業のイメージと実態に大きな乖離がある。従って広報・IR室の仕事は、等身大の帝人を訴求することである。今回の受賞がそういう活動に対しての評価であったらたいへんうれしい。今後も帝人グループが正しく理解されて、企業価値が向上するように広報活動に邁進していく。

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