日本経団連タイムス No.2875 (2007年9月13日)

今後の省エネルギー政策で資源エネルギー庁と懇談

−関係部会を合同で開催/説明聴取し意見を交換


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は11日、東京・大手町の経団連会館において、環境安全委員会地球環境部会(猪野博行部会長)、資源・エネルギー対策委員会企画部会(佐藤順一部会長)を開催し、資源エネルギー庁の三木健省エネルギー対策課長から、「今後の省エネルギー政策の方向性」について説明を聴くとともに、意見交換を行った。三木課長の説明概要は次のとおり。

省エネ政策の検討の背景

石油ショック以降の官民を挙げた取り組みにより、わが国は1973年以降、30%を超えるエネルギー消費効率の改善を実現し、世界最高水準の省エネを達成してきた。
しかし、エネルギー安全保障と地球温暖化問題への対応の観点から、省エネへの要請が強まっており、短期的には既存対策のみでは京都議定書の目標達成が困難な状況にあるため、より実効ある省エネ対策の検討が求められている。
現在、総合資源エネルギー調査会の省エネルギー部会を中心に、エネルギー消費の半分弱を占める産業部門、エネルギー消費の増加が著しい民生(業務・家庭)部門等の新たな対策について、規制と支援の両面から幅広く検討を行っている。具体的な検討状況は次のとおり。

1.製造業等の産業部門

現行の省エネ法では、工場ごとにエネルギー原単位の改善を要請し、一定規模以上の工場には所要のエネルギー管理を義務付けている。他方、複数の工場を有する大企業等においては企業単位でエネルギー管理を行うケースが多い。
また、大企業に比して省エネ対策が遅れている中小企業には潜在的な省エネ余地が大きく、大企業の一部には取引先企業の省エネ活動を支援する動きもある。

(1) 企業単位のエネルギー管理の導入

従来の工場単位の管理制度に加えて、企業単位の省エネを評価する制度を整備することで、企業経営全体の中で対策を強化できる仕組みを構築したい。

(2) セクター別ベンチマーク方式の導入

主要業種における工場の省エネ基準に共通の評価指標(ベンチマーク)を導入し、業種ごとに省エネ水準を客観的に評価できる枠組みを検討する。

(3) 大企業による中小企業への省エネ支援

大企業による中小企業への省エネ支援を推進するため、支援実績を自らの省エネ量としてカウントできる制度を検討する。

2.オフィス、商業、サービス等の業務部門

産業部門と同様、省エネ法により一定規模以上のビルにはエネルギー管理を義務付けているが、適用範囲が13%と低く、エネルギー消費量は著しく増加している。また、大型ビルでもテナント部分は規制の対象外となるケースがある。

(1) 企業単位のエネルギー管理の導入

複数の店舗を運営し、共通の省エネ活動が展開できる企業も多いため、産業部門と同様、企業単位のエネルギー管理制度を導入することが有効と考えている。

(2) オーナーとテナント問題への対応

ビル所有者とテナントがビル全体のエネルギー使用の実態を把握できるようにし、両者が連携して省エネを推進する仕組みを構築したい。

(3) 建築物の省エネ措置の強化等

省エネ性能の高いビルが市場で評価・選択される仕組みや、省エネ型の建築物に対する制度的な支援を拡充したい。

3.家庭・住宅部門

企業の技術開発等により、家電製品単体の省エネ性能は大きく向上しているが、ライフスタイルの変化や世帯数の増加等によって、家庭部門のエネルギー消費は増加を続けている。
また、住宅の省エネ基準への適合率は新築で約3割にとどまり、有効な対策を講じる必要がある。

(1) トップランナー機器の拡充

トップランナー規制の対象となる家電製品のエネルギー使用量は、家庭全体の約7割をカバーしているが、新たに出荷が伸びている製品への拡充等を検討する。

(2) 住宅の省エネ強化

住宅の躯体(くたい)部分と設備を一体で評価できる省エネ基準を整備するとともに、省エネ性能の可視化を進める。また、省エネリフォームを促進する税制等についても検討する。

(3) 企業による消費者への省エネ支援、国民運動

消費者に対する省エネ支援実績を企業の省エネ量としてカウントできる選択肢を用意することにより、省エネ機器の導入を促すことを検討する。さらに、省エネ家電、省エネ住宅(ロ・ハウス)の普及等を積極的に広報し、国民運動を展開することを考えている。

4.運輸部門

企業による燃費基準の早期達成等により自動車の単体燃費は大幅に改善している。さらに、昨年、世界で初めて大型トラックとバスの燃費基準を導入し、今夏には乗用車等の次期燃費基準も決定した。今後は、改正省エネ法の着実な施行を推進するとともに、モーダルシフト、交通流対策等を総合的に推進していく。

5.革新的な技術開発の推進

省エネルギー技術のブレークスルーをめざし、産官学等の主体が中長期的視点から技術開発を進められるよう、今年4月、省エネルギー技術戦略を取りまとめた。今後は、この戦略に基づき、革新的技術の開発を加速的に進めていく。

◇◇◇

資源エネルギー庁からの説明に対し、日本経団連側からは「業種ごとのエネルギー効率を国際的にも比較できる基準づくりを指向すべき」とする意見や、「省エネ製品が的確に消費者から選択される市場の構築に努めてほしい」といった要望が出された。

【産業第三本部】
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