日本経団連タイムス No.2878 (2007年10月4日)

経済連携推進委員会を開催

−日ASEAN包括的経済連携協定の署名へ向けて今後の見通しなど説明を聴取


日本経団連は9月12日、都内において経済連携推進委員会(米倉弘昌委員長、大橋洋治共同委員長)を開催し、外務省の横田淳特命全権大使ならびに経済産業省の佐々木伸彦通商交渉官からAJCEP(日ASEAN包括的経済連携)協定大筋合意の概要および署名・発効に向けた今後の見通しなどについて説明を聴いた。

去る8月25日、フィリピンのマニラで開催された日ASEAN経済大臣会合において、AJCEP協定が大筋合意に至った。わが国企業の生産・流通ネットワークがASEAN全域に広がる中、ASEANを面的にカバーするEPA(経済連携協定)の実現は急務となっている。日本経団連ではかねてAJCEP協定の早期締結を強く要望してきた。

横田大使は、ASEANは日本にとって歴史的、地理的に非常に重要なパートナーであることを強調した上で、AJCEP協定交渉の経緯および大筋合意の内容を概説した。同協定により日本は、貿易額の90%について関税を即時撤廃し、10年以内の段階的撤廃も含めれば、貿易額の93%の関税を撤廃することになる。一方、ASEAN10カ国のうち、先進6カ国(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ)は即時・段階的合わせて90%の関税を撤廃、ベトナムは15年以内に90%の関税を段階的に撤廃、カンボジア、ラオス、ミャンマーは18年以内に85%の関税を段階的に撤廃する。横田大使は、協定条文の詳細を明確化する作業などが残っているものの、今回のAJCEP協定は、日本にとって地域を対象とする初めてのEPAであり、飛躍的な進展と評価した。

一方、佐々木通商交渉官は、AJCEP協定の大きな意義の一つである累積原産地規則について説明した。原産地規則とは、ある産品がEPAに基づく特恵関税の対象となる原産品に該当するか否かを判定するためのルールであるが、AJCEP協定における累積原産地規則は、ASEAN域内での「累積」を認めるものである。これにより、日本から輸入されASEAN域内を流れる高付加価値の基幹部品についてもAJCEP協定上の特恵関税率が適用され、ASEANで生産ネットワークを構築している日本企業にとって大きなメリットとなる。また、佐々木通商交渉官は、既に今年6月に発効済みである韓国とASEANとのFTA(自由貿易協定)とAJCEP協定の大筋合意内容を比較し、カラーテレビや完成車、自動車部品などの主要品目について、AJCEP協定では韓ASEAN・FTAよりもおおむね有利な譲許内容が確保されたことを示した。さらに、日本がASEAN各国との二国間EPAだけではなく、地域としてのASEAN全体とのEPAを締結する姿勢を対外的に示した点で、AJCEP協定には非常に大きな価値があると述べ、今後東アジアにおける地域統合を推進する上でも、重要な役割を果たすと指摘した。

続いて行われた懇談において、米倉委員長が東アジア共同体形成の可能性について質問したところ、横田大使からは、EPA・FTAの締結や東アジア共同体の構築に当たっては、排他的なものとならないよう留意しながら交渉を進めていく必要があるとの回答があった。

【国際第二本部経済連携担当】
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