日本経団連タイムス No.2878 (2007年10月4日)

「障害者雇用の現状と見直しの方向について」

−雇用委員会開き講演聴取


日本経団連は9月21日、東京・大手町の経団連会館で雇用委員会(鈴木正一郎委員長)を開催し、岡崎淳一厚生労働省高齢・障害者雇用対策部長から、「障害者雇用の現状と見直しの方向について」と題した講演を聴取した。
岡崎部長の講演の概要は次のとおり。

■障害者雇用の現状

わが国の障害者は現在約700万人おり、その中で労働力人口に相当する在宅の18歳以上65歳未満の数は約300万人、うち企業に雇用されているのは約50万人である。これを実雇用率からみると、2006年度の実雇用率は1.52%であり、徐々に増えてきているものの、法定雇用率の1.8%には達しておらず、障害者雇用率のさらなる上昇が課題となっている。

厚労省では、障害者雇用の促進を目的として昨年8月から「多様な雇用形態等に対応する障害者雇用率制度の在り方に関する研究会」「中小企業における障害者の雇用の促進に関する研究会」「福祉、教育等との連携による障害者の就労支援の推進に関する研究会」の三つの研究会を開催し、今年8月に報告書を取りまとめた。これらの報告書を受けて、現在は労働政策審議会障害者雇用分科会で障害者雇用促進法の改正を念頭に置きながら以下の見直しの検討を進めている。

■短時間労働を通じた障害者雇用の促進

最近はフルタイムの労働だけではなく、短時間の労働など、多様な形態での就労を希望する障害者が増加している。短時間労働は障害の特性や程度、加齢に伴う体力等の面での課題に対応可能な働き方であり、障害者雇用の促進が期待できる。そこで、障害者雇用率制度において、週20時間以上30時間未満のすべての労働者を対象にすることを検討している。これにより短時間労働者の多い企業はさらなる障害者の雇用が求められることから、激変緩和措置として一定の準備期間の設定が必要であると考えている。

■労働者派遣を通じた障害者雇用の促進

労働者派遣事業については、派遣労働者の障害者雇用率の低さが問題となっている。そこで、派遣労働者の受け入れ先となる派遣先企業が積極的に障害を持つ派遣労働者を受け入れるような雇用促進策を検討している。具体的には、派遣先企業が障害を持つ派遣労働者を受け入れた場合にメリットが生じるよう、障害者雇用率制度において、派遣先にも障害者雇用数が反映されるような仕組みを検討している。

■中小企業における障害者雇用の促進

障害者雇用率を企業規模別にみると、1000人以上の企業においてはこの10年で大幅な改善がみられる一方、56人以上300人未満の中小企業においては急激に低下しており、その歯止めが課題となっている。

障害者雇用促進法では、障害者の雇用に伴う事業主の経済的負担の調整を図ることを目的に、法定雇用率未達成企業から納付金を徴収し、それを財源として法定雇用率達成企業に対し調整金を支給する納付金制度がある。

現在、300人未満の企業はこの納付金制度の適用除外となっており、このことが急激な雇用率の低下の要因として考えられるため、その適用対象に中小企業を含めることを検討している。しかし、このような見直しは中小企業の経営に大きな影響を及ぼすことから、その実施時期や対象とする中小企業の範囲などの観点から検討する必要があると考えている。

■除外率の見直し

また、障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種について、雇用する労働者数を計算する際にあらかじめ決められた割合の労働者数を控除することができる除外率制度が04年4月に廃止され、現在はその経過措置として除外率を段階的に引き下げていくことになっている。

しかし、この経過措置については、04年4月に除外率を一律10ポイント引き下げて以降、引き下げは行われていない。現在検討している制度の見直しに合わせて、除外率の引き下げも検討する必要があると考えている。

【労政第一本部雇用管理担当】
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