日本経団連タイムス No.2880 (2007年10月18日)

「ポスト京都議定書における地球温暖化防止のための国際枠組に関する提言」取りまとめ


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は16日、「ポスト京都議定書における地球温暖化防止のための国際枠組に関する提言」を取りまとめた。同提言では、6月のハイリゲンダム・サミット等において、ポスト京都議定書の国際枠組について2008年中に主要国で合意を行う方針が示され、今後、来年7月の洞爺湖サミット等に向けて、検討が進められていく見通しであることを受け、従来の日本経団連の考え方についてより具体的な提案を行っている。

「全主要排出国参加」「技術活用」で温室効果ガス排出量増加に対応を

提言では、「全ての主要排出国の参加」と「技術の活用」によって、世界の温室効果ガス排出量の増加に対応すべきであるとしている。すなわち、中短期では、(1)環境と経済が両立できる柔軟で多様性のある仕組みを用意することにより、全ての主要排出国の参加と地球温暖化対策の進展を促し、同時に、(2)温室効果ガス排出量の削減ポテンシャルの高い途上国を支援し、わが国をはじめとする先進国の技術を移転するとともに、長期では、(3)革新的技術の開発・普及を図るとしている。

具体的な仕組みとしては、Plan‐Do‐Check‐Action (PDCA) の手法に倣い、各国が温暖化防止対策や目標を自ら決定の上、国際的に公約し、その実施状況を一定期間ごとに国連の場等でチェックし前進させていく手法(Commitment & Progress方式)を提案している。

各国の公約に盛り込まれる内容として、(1)自国のエネルギー効率とこれを達成するための措置(2)セクトラル・アプローチに関する措置(3)志の高い途上国への資金・技術支援(4)革新的技術開発に関する措置――があると述べている。

(1)の自国のエネルギー効率とこれを達成するための措置としては、エネルギー効率改善目標ならびにこれを達成するための法制・税制上の措置等のほか、環境負荷が少ない製品が市場で正当に評価されるよう、省エネラベリング制度、グリーン購入促進制度等が考えられるとしている。

(2)のセクトラル・アプローチとは、複数の国・地域が参画し、セクターごとにノウハウを共有の上、共通のエネルギー効率目標を設定し、これを達成するために共同で取り組むものであり、これに関する措置が公約の対象となり得ると述べている。

(3)の志の高い途上国への資金・技術支援については、現在、対途上国投資について、知的財産が適切に保護されない、カントリーリスクがあるといった指摘を踏まえ、各国が政府開発援助等を活用し、途上国における投資・知的財産法制の整備、人材育成等を行い、投資環境を整備する必要があると述べている。

(4)の革新的技術開発に関する措置については、現在の技術の延長線では2050年に世界全体の温室効果ガスを半減することは不可能であり、革新的技術の開発が必要であると述べ、官民が協力して取り組むことが重要であるとしている。

また、提言は、わが国産業界の取り組みとして、ポスト京都議定書の枠組においても、自主行動計画を強化しつつ、途上国への技術移転や革新的技術開発に取り組むことを表明している。さらに、排出量取引制度については、公平な排出枠の設定は困難、官僚統制につながるといった問題点がある一方、エネルギー効率の悪い途上国への生産移転により地球温暖化にも逆行する恐れがあることから、その導入に反対している。

日本経団連では今後、この提言を踏まえ、政府・与党の関係者に働き掛けを行うととともに、国際会議の場で自ら日本の経済界の立場を主張していく考えである。

【産業第三本部環境担当】
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