日本経団連タイムス No.2880 (2007年10月18日)

報告書「ものづくり中小企業のイノベーションと現場力の強化」を発表

−今後の課題、対応策など提示


中小製造業の特徴把握

日本経団連は16日、報告書「ものづくり中小企業のイノベーションと現場力の強化」 <PDF> を発表した。報告書は、日本のものづくり産業の競争力を支えている中小製造業の特徴を把握し、それを多くの企業に示すことで、中小製造業の今後の企業経営の参考に資することを目的としている。同報告書の概要は次のとおり。

■日本の競争力の源泉としての中小製造業

これまで日本経済の基盤を支え、同時に、雇用を創出し、社会を支える安定帯として日本社会に寄与してきた中小製造業だが、景況感の停滞、事業所数の減少など厳しい状況に置かれている。このような厳しい状況を打開していくためには、イノベーションと現場力の強化が不可欠である。中小製造業におけるイノベーションの源泉は、「現場」そのものである。現場での日々の努力が「現場力」を高め、その積み重ねが大きなイノベーションを生み出していくことになる。

■多様な日本の中小製造業

中小製造業は多様であり、その特徴を一律にくくることが難しいため、ヒアリング調査や資料等の分析により、中小製造業を便宜的に、(1)グローバル・ニッチ型(2)高度職人技型(3)ローカル・ニッチ型(4)新世代型(5)協力・サポート型――の5類型に分類し、それぞれの特徴と課題を整理した。

その上で、優れた企業・経営者が持つ考え方・姿勢についての共通点を抽出した。その共通点とは、(1)高度な現場でのオペレーション能力(2)高い志・進取の姿勢(3)経営者と従業員の間の強い信頼関係――の三つであり、これらが中小製造業にとってのイノベーションの推進と現場力強化を推進していくためのエンジンであるとしている。

■中小製造業の今後の課題と対応策

中小製造業に共通する今後の課題を四つ挙げ、その対応策について言及している。

  1. (1)ものづくり産業に対するさらなる関心の喚起
    現在、製造現場でものづくりの世界に入る若者が減少している。しかしながら、ものづくりそのものに関心を示す若者は決して少なくないことから、ものづくりの大切さや楽しさを地道に伝えていく試みを通じて、多くの若者が関心を持ち、就職先として考えてもらえるよう、企業・政府が協力して訴えていくことが求められる。

  2. (2)人材確保・育成の強化
    製造業、非製造業問わず、中小企業では概して人材不足に悩んでいる。中小企業は自社の社風に適応できる人材を採用し、自社にふさわしいように育てていかなければならない。自社に合う人材に来てもらうためには、インターネットなどさまざまな媒体を通じて、自社の魅力などを発信し、人々を引き付けていくための地道な努力が求められる。

  3. (3)政府支援の自発的な取捨選択
    中小企業支援策については使い勝手が悪いなど、さまざまな批判が寄せられているが、有効に活用している企業もある。経営者の自助努力で使える支援策を自ら探すことと、中小企業を支援するための国や都道府県の機関を積極的に活用し、自社に合った支援策を探していく姿勢が必要である。

  4. (4)地域経済(産業集積)・研究機関との連携
    競争激化が進む今日においては、多くの企業が単独で生き残ることは難しい。地域経済との結び付きの中で、産学官、地元企業間の連携、さらには地元に進出している大企業との連携を進め、産業集積を活用していく必要がある。

【労政第一本部企画担当】
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