日本経団連タイムス No.2880 (2007年10月18日)

CBCCがベトナムへCSR対話視察団派遣


日本経団連の関連組織である海外事業活動関連協議会(立石信雄会長、以下CBCC)は、9月24日から28日の日程で、ベトナムにCSR対話ミッションを派遣した。

CBCCでは、近年、多数の日系企業が操業し、CSRへの対応が課題となっている中国をはじめとする東アジアへミッションを派遣し、CSRの現状や取り組みについて幅広く意見交換するとともに、各国のCSR推進団体との連携を強化している。そこで、今回は、深田静夫CBCC企画部会長を団長とし、15社から16名の参加を得て、WTO加盟や日越EPA(経済連携協定)交渉開始等により、今後、わが国との経済関係がますます緊密化することが予想されるベトナム(ハノイ、ホーチミン)におけるCSRを調査した。

ハノイでは、松永大介公使、World Concern、Action Aid等のNGO、UNIDO、Vietnam Cleaner Production Centre、ベトナム環境保護庁、ベトナム日本商工会、またホーチミンでは、ホーチミン日本商工会、Vietnam Business Links Initiative(ベトナム商工会議所)、Fujitsu Computer Products of Vietnam、Care International、大成建設、国際協力銀行、カーギル、水城幾雄総領事との間で意見交換を行った。

またホーチミンでは、アジアを中心に世界34カ国から550名が参加した国際会議「Asian Forum on CSR」に参加し、アジアのCSR推進団体と交流を深めるとともに、深田団長がプレゼンターとなり、日本経団連・CBCCのCSR推進への取り組みをグローバルに発信した。

ミッションを通じて、ベトナムでは、貧困、環境問題、法令順守、バイクによる交通事故の急増、感染症の拡大などのCSR上の課題が深刻化していることが明らかとなった。深刻化する環境問題に対処するため、ベトナム政府は、ベトナム・アジェンダ21を策定し、持続的経済発展をめざすとともに、新環境保護法等の環境規制を整備し、汚染源となる事業所に対する取り締まりを強化している。

また、ベトナム企業のCSRへの取り組みとして、ベトナム商工会議所がVBLI(Vietnam Business Links Initiative)を設立し、国際機関、NGO、製靴・繊維産業の欧米多国籍企業の支援の下、中小企業における労働環境の改善に向けたコンサルティングや研修の実施、CSRの普及、情報提供等に努めている。2005年からはCSR表彰制度も開始した。

一方、現地日系企業のCSRの取り組みは、貧困地域での学校建設や奨学金など教育関連の社会貢献が主であり、現地からも評価されている。しかし、ベトナム社会における日系企業の企業価値・イメージのさらなる向上や地域社会とのより良好な関係構築のためには、企業が単独で取り組むだけでなく、ベトナムで活動する国際機関や政府系援助機関等と、貧困や環境問題への対応で連携することも有効である。また、企画段階から、地方政府や、地域社会と幅広いネットワークを有する国際NGOと協力することにより、地域社会とのコミュニケーションを強化することができる。

また、ミッションとして参加した「Asian Forum on CSR」の多くの参加者から、日本経団連・CBCCの取り組みに強い関心が寄せられ、わが国の取り組みを積極的に対外発信する必要性を改めて認識した。アジアにおけるCSR上の課題を解決するため、日本企業が培ってきた経験やノウハウをベトナムの持続的発展に役立てることが重要であり、それが長期的には日本企業のCSRとして、日本企業の企業価値や競争力向上にもつながっていく。CBCCとしては、今後もアジア各国のCSR推進団体と戦略的に連携し、日本企業のCSRへの取り組みを支援する予定である。

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