日本経団連タイムス No.2881 (2007年10月25日)

提言「対外経済戦略の構築と推進を求める」を公表

−アジアとともに歩む貿易・投資立国を目指して
/「東アジア共同体」構築に向けた検討課題など提示


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は16日、提言「対外経済戦略の構築と推進を求める−アジアとともに歩む貿易・投資立国を目指して−」を公表した。同提言は「アジアとともに世界を支える」ことを優先課題に掲げた日本経団連ビジョンのフォローアップとして取りまとめたものである。概要は次のとおり。

1.企業活動のグローバル化の進展と国際環境の変化

東アジアを中心に、日本企業のグローバルな活動が一層進展するとともに、需要の増大を背景とする資源獲得競争、知的財産権の侵害事例の増加など国際環境も変化している。そうした中、わが国としては、これまでの受動的・状況適応型の姿勢から主体的・戦略的な姿勢に転換するとともに、対外的な諸課題と関連する国内政策を総合的にとらえ、一体的に解決していく必要がある。

2.「東アジア(経済)共同体」の構築に向けた検討

東アジア諸国との経済連携協定(EPA)交渉の成果の上に立って、「東アジア共同体」ないし「東アジア経済共同体」の具体像について真剣に議論すべき時期が到来している。そのためには、「共同体」の理念・目的等に関する共通認識の形成が必要であり、例えば「東アジア共同体憲章」(仮称)の策定の是非について検討することが有益であろう。

他方、当面は経済統合を可能な分野から進めることが現実的と考えられることから、ASEAN+6(日中韓に加え、インド、豪州、ニュージーランド)の実現に向けて、ASEAN・インド間やASEAN・豪州・ニュージーランド間のFTAの早期実現を強く期待する。なお、日ASEAN包括的経済連携(AJCEP)協定、中国‐ASEAN、韓国‐ASEAN FTA等ASEAN+1のFTAを統合することも一案である。

「共同体」の具体的な検討の場として、政府と経済界による「東アジア官民合同会議」(仮称)の設立を検討し、2010年を目途に地域統合に向けた議論を軌道に乗せるべきである。

なお、「共同体」の構築には日中間の経済連携の強化が不可欠のステップであり、日中韓の投資協定および自由貿易協定(FTA)を早期締結すべきである。また、開かれた東アジア地域の統合を実現する観点から、日米EPAを実現し、米国との政治・経済面での紐帯を強化すること、APECにおけるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)に向けた議論を活性化することが必要である。

3.グローバル・ビジネス環境の整備

WTOドーハ・ラウンドの早期妥結に向けて不退転の決意で臨む必要がある。また、交渉中のEPAの早期妥結や米国、EU等とのEPAに関する政府間共同研究の早期開始、投資協定、租税条約等の推進が必要である。

さらに、知的財産権の保護、資源・エネルギーの安定供給確保、地球温暖化問題への対応、規格・ルールの国際標準化など、貿易・投資以外のグローバル課題への対応が重要である。

国内制度については、ハード・ソフト両面での国際物流インフラの整備、諸外国の不公正貿易措置および貿易救済措置に関する制度の整備を進めるとともに、農業構造改革の加速化などが必要である。

4.対外経済戦略推進体制の整備

真の国益を総合的に判断し、責任をもって実行に移すため、省庁横断的な「司令塔」として「対外経済戦略推進本部」を内閣に創設し、官邸主導による対外交渉および国内調整権限の一本化を図る必要がある。また、「対外経済戦略諮問会議」を設置し、民間企業の意見を継続的に反映する必要がある。

官民の連携推進による外交力の強化、経済界の意見の対外的な発信力の向上も求められる。

【国際第一本部貿易投資担当】
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