日本経団連タイムス No.2881 (2007年10月25日)

防災に関する委員会を開催

−「東京都の地震対策」/中村・東京都危機管理監から説明を聴取


日本経団連は4日、東京・大手町の経団連会館で防災に関する委員会(數土文夫共同委員長、木村惠司共同委員長)を開催し、東京都危機管理監の中村晶晴氏から、東京都の地震対策について説明を受け、意見交換を行った。冒頭、あいさつした數土共同委員長は、「企業は地震、特に首都直下型地震への対応に強い関心を持っているが、都の責任者からお話を伺う機会があまりなかった」と述べ、この会合を機に企業と都との連携を深めたいとの期待を示した。なお、委員会では今後、ワーキング・グループを立ち上げ、首都直下型地震を想定したケース・スタディーを行うこととしている。
中村氏の講演概要は、次のとおり。

■対策は「敵」を知ることから

首都地域では、200〜300年間隔で関東大震災クラス(M8)の地震が発生し、その間にM6〜7クラスの地震が起きている。今後100年間では、関東大地震クラス(M8)の地震が発生する可能性はほとんどないものの、M7クラスは数回発生し、M6クラスはより高い頻度で発生すると想定される。

東京都では、2006年、首都直下地震の規模をM7.3と想定し、1995年の阪神・淡路大震災や04年の新潟県中越地震の教訓を踏まえた新たな被害想定を作成した。それによると、首都直下地震では、死者は約6000人、負傷約16万人、建物全壊約13万棟、建物焼失約35万棟など、阪神・淡路大震災を上回る被害が予想される。被害は環状7号線と8号線の間の木造住宅密集地域に集中し、この地域では多数の建物が倒壊・焼失して、多くの道路が閉塞することが予想される。

また、都市特有の現象として、(1)448万人の帰宅困難者の発生(2)ターミナル駅の混乱(3)地下街の混乱(死者、負傷者の発生)(4)エレベーター閉じ込め(5)中高層住宅住民の避難民化(6)大量のがれきの発生――などの被害が想定される。

■東京都の地域防災計画の見直し

こうした想定を踏まえ、東京都では今年5月に、新たな地域防災計画を策定した。見直しに当たっては、(1)死者の半減など減災目標の設定(2)時系列で必要な対策を明示(3)あらかじめ連携の仕組みを設定(道路調整会議、駅周辺混乱防止対策協議会など)(4)初動態勢の強化(5)都市型災害対策の強化(6)災害即応対策本部の設置(危機管理監が即時対応)――の諸点を盛り込んだ。

■首都直下地震の減災

東京都は首都直下地震の減災目標として、(1)住宅倒壊や火災による死者の半減(2)住宅倒壊・火災・ライフライン被害等による避難者の減(3)外出者の早期帰宅(4日以内)――の三つを掲げている。

これらの目標を達成するため、都ではさまざまな取り組みを行っている。

まず、死者の半減に向けて、危険度の高い木造密集地域を整備、不燃領域を増やすとともに、助成により建物の耐震化を推進している。

次に、避難者減をめざし、建物の耐震化や不燃化とともに、電気・エレベーターの早期復旧に向けて、復旧作業の拠点となる場所の確保、道路関係の行政機関による道路調整会議の開催、エレベーター復旧ルールの明確化を行っている。

最後に、外出者の4日以内の帰宅をめざすために、行政と企業が連携して駅協議会を設置、一時収容施設や帰宅支援ステーションの整備に取り組んでいる。

■災害に対する3段階の対策

都では、災害に対して3段階で対応する。第1段階は、災害応急対策であり、これには、初動態勢確立、情報収集・伝達、交通規制、救出・救助活動、避難住民・外出者の支援などが含まれ、最優先で対応する。特に初動態勢については、実際に都職員が集まって役割を果たせるかどうかという観点から参集基準や役割の明確化を図った。

第2段階の復旧対策では、ライフラインの復旧、交通機関の復旧、応急仮設住宅の設置、交通規制の解除、がれきの処理などを行う。

第3段階の復興対策としては、再び災害に襲われても大きな被害を出さないよう、住宅復興、都市復興(災害に強い安全・安心なまちづくり)、暮らしの復興、産業復興を行うこととしている。

■都の事業継続計画

災害により都の行政機能が中断した場合、都民生活や企業の事業継続に大きな影響を与える。都では今年4月に委員会を設置し、東京都事業継続計画の検討を行っているところであり、首都直下地震を想定した事業継続計画は来年発表する予定である。

■企業に期待される地震・防災対策

企業には、平素より、社屋・工場の耐震化、エレベーターの閉じ込め防止対策を進めてほしい。事業所防災計画を作成し、社員3日分の食料を備蓄、地域単位の防災訓練へも参加することが望ましい。国や都の地域防災計画を踏まえ、事業継続計画を作成することも重要である。

また災害時には、社員・顧客の安全確保を行うとともに、地域の救出・救助活動への支援に協力してほしい。また、混雑・パニックを避けるためには、むやみに社員を帰宅させず、情報を収集・伝達し落ち着いてから帰宅させるべきである。交通規制を守り、車両は動かさないでほしい。

【社会第二本部】
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