日本経団連タイムス No.2882 (2007年11月1日)

東北経営者大会、日本経団連人事・労務管理者大会を秋田で開催

−住んでよかったと思えるような魅力溢れる豊かな東北の実現へ


東北6県の経営者協会による第60回東北経営者大会、第110回日本経団連人事・労務管理者大会秋田大会(主催=東北経営者協会、秋田県経営者協会、共催=日本経団連)が10月23日、秋田市内で開かれた。同大会には、東北6県の経営者協会会員企業の代表者ら約570名が参加。日本経団連の御手洗冨士夫会長が基調講演を行ったほか、地域振興や産業振興、雇用・労働、社会保障、政治・経済の問題などについて、森田富治郎副会長・社会保障委員長、岡部弘地方団体長会副議長、鈴木正一郎評議員会副議長・雇用委員長、大塚陸毅観光委員長・国民生活委員長ら日本経団連首脳と参加者が意見交換を行った。大会の最後には、「住んでよかったと思えるような魅力溢れる豊かな東北」の実現をめざし、一体となって取り組むとの決意を示した「大会決議」を採択した。

新開卓秋田県経営者協会会長、幕田圭一東北経営者協会会長、来賓の寺田典城秋田県知事のあいさつに続いて、「『希望の国、日本』実現に向けて」をテーマに基調講演を行った御手洗会長は、(1)成長力の強化(2)地域経済の活力向上(3)働き方の改革(4)社会保障制度と少子化――の四つの課題について日本経団連の取り組みを説明した。

成長力の強化に関しては、持続的な経済成長の実現を前提に、中央と地方の格差、国・地方を通じた財政健全化など、さまざまな問題の解決に当たって全体最適化を図ることが重要と指摘。その上で人口減少社会に対応する日本型成長モデルの実現に向けて、生産性の向上とイノベーションの推進が必要と強調した。さらにEPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)の締結促進の重要性に言及した。

地域経済の活力向上については、一部の地域が成長から取り残されることなく、日本全体を豊かな社会にしていくために、地域が自立できる環境を整備することが重要と指摘。道州制の導入への取り組みを強化していきたいとの意向を示した。

働き方の改革に関しては、ワーク・ライフ・バランスの取り組みでカギとなるのは経営トップの役割であると指摘。実現に当たっては、時間ではなく仕事・役割などで決まる処遇制度や時間・場所にとらわれない柔軟な働き方が可能な環境の整備が必要と述べた。また、若年者の職業能力の向上が喫緊の課題であるとして、ジョブカード構想への協力を要請した。

社会保障については、給付と負担の関係を明確にし、納得性の高い透明な仕組みをつくることが重要と述べた上で、選択肢の一つとして、基礎年金の全額税方式という問題提起をしたと表明。少子化対策に関しては、子どもを安心して育てられる環境を整えることが重要であり、経営トップがリーダーシップを発揮し、働き方を見直していくことが求められると述べた。

「大会決議」を採択

意見交換では参加者から、(1)地方の経済格差、法人実効税率の引き下げをはじめとする税制改革への取り組み、成長力底上げ戦略への対応(宮城)(2)ワーク・ライフ・バランス推進の取り組みと労働関連3法案への対応(福島)(3)地方の医師不足対策と年金制度問題への対応(岩手)(4)企業連携による地域産業振興と地場産業育成に対する考え方(山形)(5)地球温暖化問題と「次世代エネルギーパーク」の役割(青森)(6)地域振興の手段としての道州制と地域経営の考え方(秋田)――などに関する発言があり、日本経団連首脳が応えた。

大会ではこのほか、日本総合研究所会長・三井物産戦略研究所所長の寺島実郎氏の特別講演「21世紀から何を学ぶか―そして21世紀の世界潮流と日本」を聴取した。

最後に、(1)人口減少下で持続的な成長を実現し、地域間格差の解消を図るために行財政改革、法人実効税率の引き下げや地方交付税の見直しを含む抜本的な税制改革を着実に推進すること。東北における地場産業の育成は重要な課題であり、技術開発やIT化などによる生産性向上に取り組む企業への支援制度の拡充を図ること(2)年金に対する国民の信頼回復や医師不足解消策に早急に取り組むとともに、年金一元化などの制度改革を含む持続可能な社会保障制度を確立すること。健康保険の国庫負担引き下げの一部の健康保険組合による肩代わりやパート労働者への社会保険適用は慎重に検討すること(3)労働3法が企業経営に与える影響は大きく、国会で慎重な審議を行うこと。ワーク・ライフ・バランス推進のため、多様で柔軟な働き方についての雇用ルールの確立に努めること(4)道州制については、国民の議論の基礎となる導入スキームや工程等を早期に示すこと。地球温暖化防止は喫緊の課題であり、次世代エネルギーに対する取り組みへの理解増進を目的とした「次世代エネルギーパーク」を青森県六ヶ所村へ整備し、地域振興を図ること――などの諸点を政府や関係機関に対して要請する「大会決議」を採択した。

【総務本部組織協力担当】
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